要旨

〇2020年比でドル円レートは約40%円安が進んだが、内閣府のマクロモデル(10%の円安で民間消費デフレーター約0.2%押し上げ)を適用すると、円安によるインフレ押し上げ効果は年平均0.2%程度に過ぎない。これは近年のCPI上昇幅(前年比2.5%超)の1割以下であり、円安を物価高の主犯とする議論は過大評価である。

〇内閣府のマクロモデルが近年の「価格転嫁しやすい現状」を反映しきれていない可能性を考慮し、令和7年度年次経済報告(内閣府)の分析をもとに感応度を従来の2〜3倍と仮定して試算しても、CPI上昇率に対する要因の2割以下となり、ウェイトが高くないという結論に揺らぎはない。

〇これまでのインフレの正体は、円安という為替要因以上に、エネルギー・資源価格の高騰や、世界的なサプライチェーンの再編等に伴う輸入物価そのものの上昇、あるいは国内の人件費上昇などを背景とした価格転嫁といった、より複合的な要因によって構成されていると結論付けられる。円安はあくまでその影響を増幅させる従属的な要因であり、物価構造の分析には為替以外のコストプッシュ要因を重視すべき。