過熱する「円安主因説」への疑問

近年の物価上昇において、円安が過度なインフレの主因であるとする見方が一般的となっている。実際、2020年と比較して、昨年の平均ドル円レートは約40%もの円安が進行している。しかし、輸入物価の上昇がそのまま消費者物価(CPI)を押し上げているという言説には、計量経済学的な観点から慎重な検証が必要である。

マクロモデルに基づくインフレ押し上げ効果の試算

内閣府(計量分析ユニット)が公表しているマクロ経済モデルの乗数によれば、「10%の円安による民間消費デフレーターの押し上げ効果は0.2%程度」とされている(図表1)。

この係数を直近5年間の推移に当てはめると、以下の試算が成り立つ。まず、累積の円安進行幅は(2020年比)で約40%となる。となると、累積のインフレ押し上げ効果は約0.8%(=約0.2%×4)となる。このため、年平均の押し上げ寄与度は0.8%/5年=約0.2%程度となる。

この試算結果に基づけば、近年の物価上昇率のうち、純粋に「円安」のみによって説明できる部分は限定的であり、円安が過度なインフレの主因であるという議論は、定量的な根拠に欠ける「行き過ぎた議論」である可能性が高いと言える。