金価格の上昇が続いている。2010年代は1トロイオンスあたり1000米ドル台で推移していたが、2019年前後から価格が上がり続け、2025年10月にはついに4万ドルの大台を突破し、年初来で60%超もの価格上昇を遂げた。連日のように最高値更新の報道があり、金価格の動向を注視していた投資家も多いだろう。
なぜ今、金が注目されているのか。金の世界的な業界団体であるワールド・ゴールド・カウンシルで顧問を務める森田隆大氏に、金投資の基礎から最新動向、そして個人投資家が知っておくべきポイントまで、詳しく話を伺った。
金価格の上昇の背景には米ドルの信認低下がある
――そもそも、金価格はどのように決まるのでしょうか?
ほかの資産と同じく、需給のバランスで決まります。
金の需要は主に4つあり、①宝飾品が45%、②産業用が15%、③投資が22%、④中央銀行が17%の比率で構成されています(図1)。例えば金の価格が上がれば投資需要は増えますが、宝飾品の需要は落ちるというように、4つの需要のあいだには補完関係がみられ、全体としてみれば急激な需要の変化は少ないです。
図1 金の地上在庫と埋蔵量
また、供給についても、金の推定埋蔵量が5万5000トンと量に限りがありますが、リサイクルも可能であることから、供給量が崩れることもそうはありません。そのため、需給のバランスが常に一定になりやすく、金の価格は安定して推移する傾向にあります。
――なぜ近年になって価格が大きく上昇しているのでしょうか?
金価格は2019年ごろから上昇し始め、約150%上昇しています(図2)。
図2 金価格の推移
こうした値上がりの背景には、基軸通貨としての米ドルの信用力(=信認)低下から金の需要が増したことがあります。
歴史を振り返ると、米同時多発テロやリーマンショックの影響から米ドルへの信認が揺らいでいました。こうした流れの中で、近年になりウクライナ侵攻によるロシアへの経済制裁や中国による米国との覇権争い、さらには米国のトランプ大統領による一連の政策といった背景により、米ドルの信認低下はさらに加速しています。そのため、各国中央銀行は、米ドルに代わる外貨準備として金の購入を増やしているのです。
また、コロナ禍を経た2022年頃から金利の上昇に伴いドルが相対的に強くなった際には、他国の通貨価値が毀損しました。こうした為替リスクへの対応としても、金の魅力は高まっています。さらに、個人投資家のあいだでもリスクヘッジとしての金という位置づけが浸透しつつあり、個人投資家からも選ばれやすい資産になってきました。
こうした不確実性の高まる環境を反映し、さまざまな属性の投資家のあいだで、究極の安全資産である金への分散ニーズが増したと考えています。
――金価格は好調な一方で、2025年の10月下旬には前日比で過去最大の下落となる▲5.7%を記録しました。こうした急激な値動きに不安の声もありますが、どういった要因があるのでしょうか。
要因の一つには、ETF投資家の一部が行っている短期的な売買が挙げられるでしょう。しかし、不確実性が続く限りは中央銀行の金需要が継続するとみられ、金の長期的な魅力度は変わっていないとみています。
