2025年4月の米国関税措置が広げた混乱の収束への期待感とは裏腹に、年明け以降、地政学的な不確実性がいっそう高まっている。AI関連銘柄が米国市場、世界市場の成長を支える中、バブルを指摘する声もくすぶり続ける。激動の時代にどう立ち向かえばよいのか。国内の個人投資家の間で知名度を高めている株式指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」などを算出する世界的な指数プロバイダー、MSCIのチーフ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・オフィサーであるアシュリー・レスター氏に考えを聞いた。
従来の“安定的な枠組み”に変化
――2025年から2026年の始めにかけ、世界市場の状況は複雑さを増しています。個人投資家は足元の変化をどのように理解すればよいのでしょうか。
まずMSCIは投資のアドバイザーではなく、私たちの見解は、私たちが気づいた事実と市場参加者の認識に焦点を当ててお伝えします。その観点から言えば、2025年に続き2026年の市場にも強大な影響力を及ぼしうるテーマとして、地政学上の役割、AI、そしてプライベートクレジットの重要性の高まり――この3つを挙げることができるでしょう。
まず地政学に関しては、2025年は単なる情勢の変動ではなく、構造的枠組みそのものが変わってきたと言えます。
これまで市場参加者は政治的な取り決めが安定的に守られる世界に順応しきっていました。しかし現在では、非常に急速かつ構造的な政策シフトが起こる可能性を常に気にかける必要があります。
地政学的な構造変化が市場に与えた影響の一例が欧州の防衛セクターで2025年に見受けられた突出して高いパフォーマンスです。背景には、北大西洋条約機構(NATO)の役割に関する認識の変化があります。欧州各国政府は防衛費を増額し、結果として欧州企業への資本流入が増加しました。
もちろん、その影響範囲は特定のセクターに限りません。無視できないもう一つのトレンドとして、米ドルおよび米国株式のパフォーマンスの相対的な低さが挙げられます。2025年4月の(米トランプ大統領が大規模関税措置を打ち出した)「解放の日」以降、相対的に新興国株式のパフォーマンスが向上する状況は、グローバル投資における最適な資産配分や米国資産へのエクスポージャーの程度に関する投資家の姿勢が問われる局面でした。
