2月13日の「NISAの日」を記念して企画された「投資信託で長期投資!エッセイ・コンクール」。全国から数多くの力作が寄せられた中から佳作に輝いたニックネームF.Wさんの体験談をお届けする。

佳作:離れてしまった職場の同僚 ~投資信託と、とりとめのない思い出ばなし~

彼に出会ったのは、数年前。職場の同僚だった。

20歳くらい年下だったのだが、なぜかとてもウマがあった。

並んでパソコンの前に座って、仕事をしながらいろいろな話をしたけれど、一番盛り上がったのは投資の話だった。

そのころの私は、資産というほどの資産ではないけれど、銀行にお金を預けておくだけでは不安だったので、いろいろと投資にチャレンジをし始めていた。だから20ほども年下の彼と話が合うこと自体が面白かった。

当時はまだ旧NISA制度だったが、彼はその限度額まで投資信託を積み立てていると言った。

そんな20代の若者を、私は初めて見た。

NISAのメリット・デメリット、自分が投資している投資信託について、彼は楽しそうに私に教えてくれた。

もちろん、ずっと投資の話ばかりしていたわけではない。くだらない話も、子どものころ虫が大好きだった話も、今付き合っているという彼女の話も楽しかった。

私は彼にどんな面白い話ができたのか、私と話していて楽しかったのか、今でもよく分からない。ひとり息子の話とか、ベランダで育てていたキュウリについていた、見たことのない虫の話とか、思いつくままに話していたような気がする。

とりとめのない話の中で、選挙には必ず行くとか、社会のことについても話した。資産運用について私が知らなかったこと、例えば特定口座だと自分で確定申告をしなくていいとか、確定申告した方がいい場合もあるとか、社会保険料の額にも影響があるとか、そんなことを教えてくれたのも、彼だ。そんなに高級取りというわけではないから、月々の給料からだとNISAで積み立てをするくらいで精一杯。それでも、NISA以外の株式投資についても勉強しているという彼の姿勢は、私にとっては先生でもあった。

なぜ投資についてそんなに詳しいのか、と尋ねたことがある。

その時の彼の返答は「学生時代、アルバイト先の先輩に勧められたから」とのことだった。

そしてそのころ興味本位で買った、当時の新興企業で、今では大手企業に成長したある会社の株をまだ持っている、とも言った。

思い返せば、私が社会人になってすぐのころ「ミニ株」が話題になったことがあった。同期の友人はそれをきっかけに株式投資を始めたのだが、私は何もしなかった。

もしあの時、私も株式について学んでいたら? 投資信託にチャレンジしていたら?

「家一軒分」とよくからかわれた飲み代を、少しでもそこに投入していたら?

などと考えないこともないが、それでももう数年、私も旧NISAから現行のNISAまで、投資信託でコツコツと積み立てを続けている。

私よりもずっと前からNISAで積み立てをしてきた彼が、少しうらやましい気もするけれど、投資だけでなく、きちんと政治や社会についても考えて、意見を述べることができる彼を応援したいという気持ちが大きかった。

そんな感じで面白おかしく投資についておしゃべりしていた彼も、数年で異動になり、なかなか会うこともなくなった。時折、社内ですれ違えば挨拶はするけれど、投資の話はしない。

寂しくないといえば嘘になるかもしれないけれど、社内の人間関係とはそんなものなのかもしれない。

投資信託やNISAの話を聞くと、彼を思い出すけれど、彼のNISA話で一番印象に残っていることがある。

残業で遅くなった夜。古い廊下から、外へ出る階段を登って行こうとした時。

多分、私と彼と2人で歩いていたのだと思う。

ずっとNISAの限度額まで積み立てをしてきたという彼が、こう言ったのだ。

「だけどもう、積み立ての金額を下げようと思っているんです」

私は深く考えもせず、「へえ」と言うだけだった。

そうしたら彼は言ったのだ。少しはにかんで。

「彼女と結婚するから…彼女に何か、買ってあげたいし」

まあ、なんて。顔には出さなかったけれど、私は甘酸っぱい思いでいっぱいになった。

使うためのお金だもの、使う時は使わないと。

多分彼は、積立自体はこれからも続けていくだろうし、生活が落ち着いたら金額も増やしていくことだろう。そういう彼だ。

一生は長い。

私は、新しい家庭を築いた彼に、投資信託が寄り添っていくのだなあ、なんて、テレビCMのようなことを考えていた。