2014年に少額投資非課税制度(以下、NISA)が始まり、その後は「老後2000万円問題」などもあって、国民の投資の必要性に対する認識は高まってきていると思います。それでも、NISAは1000万口座程度(2021年6月末時点)ですから、まだ一部の人にしか活用されていないのが実情です。
投資教育は重要であるものの、その効果には限界も
そんな中、金融庁を中心に金融リテラシー強化のための活動が増えています。実際、金融庁の職員が母校で金融リテラシー講座を開催していますし、かくいう私も母校の大学で、毎年、金融リテラシーを教えています。授業後に学生から、「NISAで投資を始めました!」と言われるととてもうれしくなり、私の講義で適切な投資に導くことができたと感慨に浸ることもあります。
ただ、冷静に考えてみると、このような機会に恵まれている学生はごく一部であり、社会人になる前に金融リテラシー教育を受けている人はそう多くないでしょう。また、仮にそのような機会があったとしても、それを履修する人は限られますし、100%の学生が理解できるわけではありません。英語や数学のテストで100点を取れない人がいるのと同様、金融リテラシーについても十分に理解できない人もいます。つまり、金融リテラシー教育が大事であることに疑いの余地はありませんが、その効果には限界があるのです。
一方、公的年金の給付額が、マクロ経済スライドによって徐々に削減されていく中、老後の生活を自分自身で守ることは多くの人にとって“待ったなし”の大きな問題となっています。その中で「自助」の手段のひとつとしての資産運用の必要性はますます高まっているにもかかわらず、前述の通り、資産運用を行う人が十分に増えていないのです。
では、投資教育以外に何をしたら、多くの人が資産運用を実践するようになるのでしょうか?