遺族基礎年金には法改正が。でも、制度全体の見直しも必要では

現在、老齢年金を受け取っている60代以上の世代は、前段で述べた「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という価値観の中で生きてきた方が多いと言えます。そのため、遺族厚生年金において寡婦に加算などがつくことに違和感を覚える方は少ないでしょう。

1つの動きとして、遺族基礎年金は2014年の法改正により、支給要件の1つである「子のある妻」から「子のある配偶者」となりました。これは一歩、遺族年金のシステムが今の感覚に近づいたと言えます。

今後は遺族基礎年金のみならず、世代を超えた制度全体の見直しも必要ではないかと感じます。

最後に
多様な働き方が推進され、さらなる女性の社会進出も急務とされ、男女を問わず仕事を持ち家事・育児を分担する社会に移行している現代。

そんな時代感覚からすると、主たる生計維持者である配偶者を失い、遺された配偶者が高齢期に至るまでの主な生活保障が遺族年金であるならば、「寡婦」に限定した加算などが適切である、とは必ずしも言えないでしょう。

一方、配偶者と死別などして母子家庭、父子家庭となった場合の金銭面にも目を配る必要があります。「2016年度全国ひとり親世帯等調査(厚生労働省)」のデータでは、母子家庭の平均年間収入は223万円(母自身の収入)、父子家庭の平均年間収入は380万円(父自身の収入)という現実も。つまり、年金制度の見直しは、その前提として女性(妻または母)の雇用・就労環境の整備・充実とセットで求められるということです。

今後、家族の在り方や社会・経済の変容に対応した年金制度の見直しと、多様性を目指す環境整備のための議論に期待したいところです。