令和の感覚からすると違和感!? 中高齢寡婦加算にまつわる疑問点を考察

特に若い世代に遺族年金の説明をしていると、次のような疑問をいただきます。

・遺族厚生年金の支給要件について、妻は無条件だが、夫には年齢制限があるのはなぜか
・「寡婦」には支給され、「寡夫」には支給されないのか
・「子のない妻」には支給され、「子のない夫」は支給されないのか

このように男女の差を設けるのが、現代にはそぐわない、という感覚でしょうか。

寡婦とは、夫と死別又は離別し、再婚していない女性、夫のない独身の女性を意味します。公的年金制度に限らず、家族の在り方の1つとして、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方が日本には少なからずありました。その影響を受け、年金制度のベースには、いわゆる男性が働く(女性は専業主婦)世帯をモデルとし、遺族年金は主たる生計維持者である夫亡き後の妻などの生活保障という考えがあります。

こうした時代背景から考察すると、一家の大黒柱である夫が亡くなった場合のセーフティネットとして、遺族年金の寡婦加算などは、納得できる制度と言えるでしょう。

ただ、1996年以降共働き世帯が増え続けており、女性の社会進出は年金制度創設時とは比べようもないほど増加しています。

現行法では、仮に一家の大黒柱である「妻」が亡くなった場合、55歳以下の「寡夫」には遺族厚生年金は支給されません。55歳以上であっても支給は60歳になってからです※3。
※3 ただし、夫が遺族基礎年金を受給中の場合に限って、60歳未満でも支給されるという例外はあります。

世帯の多様化、女性の就労促進などにより、共働き世帯が多数を占めるようになってきた現代では、寡婦のみを対象とする本制度に疑問を持つ人が増えてきていることにも納得がいきます。改めて社会実態に合わせた仕組みへの見直しを検討する必要があるでしょう。