今後はSDGsの取り組みにも注目

コロナ後の経済正常化を見据え、WTI原油先物価格は2021年3月はじめに1バレル=60ドルまで回復した。しかし、米国のバイデン大統領や菅政権をはじめ、世界各国が地球環境に配慮した脱炭素化を進めており、総合商社にとって石油・石炭資源頼みの経営は見直す必要もあるだろう。

現に、各商社は中長期経営計画で石炭権益撤退を進め、再生可能エネルギーをはじめとしたSDGsへの取り組みに注力し始めている。

例えば伊藤忠商事は水素ステーションの展開など、水素・アンモニアによる次世代燃料分野の開拓を進めている。また、既存の顧客基盤を活かしたプラスチックリサイクル事業も計画中だ。

ほかにも、住友商事は「住友商事グループ人権方針」を掲げ、事業を通じて海外の労働者の保護など、人権問題に取り組む方針を表明した。三井物産も持続可能なエネルギーの安定確保・安定供給を計画の要の一つに置いている。

三菱商事は成長の見込みがある通信・データ資源や小売り、複合都市開発、Eコマースなど各セクターの川下領域の強化を計る方針だ。これらの分野が伸びれば、首位奪還の可能性もあり得るだろう。

現状では非資源分野の割合が高い「伊藤忠商事」「住友商事」「丸紅」がトップ争いをしていくことが予想されるが、各社が非資源分野の拡大を行えば再び勢力図が一変することも考えられ得る。今後は各商社の新領域、とくにエネルギー分野などに注目して動向を見守りたい。