伊藤忠商事は2021年5月10日に発表された2021年3月期決算で「純利益」「株価」「時価総額」の3つで五大商社のトップとなる「商社三冠」を達成した。2020年6月の時点で株価、時価総額ともに1位となっており、あとは決算発表を待つのみだった伊藤忠商事。長年トップの座を守ってきた三菱商事との明暗を分けた要因とは? また、今後五大商社の勢力図はどうなっていくのか。

伊藤忠商事が悲願の商社三冠を達成

流通や事業投資、事業経営を主とする企業を総合商社と呼ぶ。なかでも「三菱商事」「三井物産」「伊藤忠商事」「住友商事」「丸紅」は五大商社と呼ばれ、いずれも日本を代表する企業だ。

長年、三菱商事は純利益、時価総額、株価において五大商社首位をキープしてきた。しかし、時価総額は2020年6月2日の終値ベースで

時価総額(2020年6月2日終値ベース)
伊藤忠商事:3兆7649億円
三菱商事:3兆6964億円

と伊藤忠商事に追い抜かれ、さらに同月22日には株価も

株価(2020年6月22日終値ベース)
伊藤忠商事:2331.0円
三菱商事:2317.5円

と首位の座を明け渡している。

その後、伊藤忠商事は2021年3月期決算が発表される5月10日まで時価総額、株価それぞれのトップを守り通し、設立以来初となる商社三冠を達成した。2021年3月期決算では伊藤忠商事の純利益が4014億円、三菱商事が1725億円だった。

総合商社の事業領域は資源と非資源に分かれる

伊藤忠商事が商社三冠を達成した要因について考察する前に、今一度、五大商社の事業領域とそれぞれの特徴についておさらいしておきたい。

各商社の事業領域は大きく2つに分かれる。1つは石油や天然ガスなどのエネルギー資源、金属資源を取り扱う「資源分野」。もう1つは資源分野以外の食料品や機械、住宅、繊維などを取り扱う「非資源分野」だ。

それぞれの領域において、原料や製品の輸出入と販売、所有する人材や資産、経営ノウハウの投資を行い利益を得るのが、商社の基本的なビジネスモデルだ。

なかでも三菱商事と三井物産は純利益に占める資源分野の割合が高い。2021年3月期の決算発表時点では三菱商事は約72%を、三井物産は約61%を資源分野に頼っている。一方、伊藤忠商事、丸紅、住友商事の商社は非資源分野の割合が高い。伊藤忠商事は純利益のうち、73%が非資源分野によるものだ。

2021年5月時点の決算資料より編集部作成 ※1 住友商事の数値は一過性を除く業績