なぜ株価上昇?「エクイティスプレッド」と「配当利回り」から深堀り

株価の上昇理由をさらに掘り下げてみましょう。住友理工の株式が買われているのは、同社の「エクイティスプレッド」が改善しているためと説明できます。

エクイティスプレッドとは、一般にROE(自己資本利益率)から資本コストを差し引いて算出される指標です。また資本コストは投資家の期待リターンであり、企業側から見ると株式による資金調達のコストとみなせます。

つまり、エクイティスプレッドは企業が投資家の期待に応えられているかを測る指標といえます。エクイティスプレッドがマイナスなら、ROEが資本コストを下回っており、その企業は投資家の期待に応えられてない状況です。反対にプラスなら、投資家の期待以上に利益を稼いでいる状況で、株式は買われやすくなります。

住友理工の場合、エクイティスプレッドはプラスの状況だと推測できます。同社は資本コストを7%弱と試算しており、ROEは親会社所有者帰属持分ベースで24年3月期に10.3%、25年3月期には13.3%まで上昇しました。マイナスの推移が続いていたエクイティスプレッドがプラスに転じたことで、株式市場での評価につながっていると考えられます。

住友理工のROE(2016年3月期~2025年3月期)
 
出所:住友理工 決算短信より著者作成
 

もう1つ、株価の上昇に貢献しているとみられるのが配当金の増額です。

住友理工は利益の拡大に合わせ、配当金を積み増してきました。24年3月期は前期比2.4倍の1株あたり36円に引き上げ、翌25年3月期には66円まで増配します。実績の配当利回りは1~2%台の推移でしたが、25年3月期は3.79%にまで向上しました。

住友理工の配当金の状況(2016年3月期~2025年3月期)
 
出所:住友理工 決算短信より著者作成
 

配当利回りの上昇は、投資家にとって資金回収期間の短縮につながります。また、配当金は自己資本を減少させるため、ROEを改善させること、ひいてはエクイティスプレッドを拡大させる効果もあります。住友理工の株式が買われているのは、これらの理由が働いていると考えられます。