<前編のあらすじ>

幼い頃から大切に育てられ、名門女子校から有名私立大学へと進んだ武藤佳織さん(仮名)。医師の父と専業主婦の母のもとで、たったひとりの娘として多額の教育費をかけられ、資格も多く取得してきました。

しかし、親の期待に沿った企業就職の道ではなく、佳織さんが選んだのはまさかの「水商売」。そこには、親の過干渉や価値観の押しつけへの反発がありました。

彼女は両親に内緒で婚活を始めました。ひとり娘を心配するあまり、過干渉になってしまう親との関係はさらに悪化していきます。

●前編:教育熱心な両親の期待を背負ったお嬢様…就職活動の末に選んだ"意外すぎる人生"とその裏に潜む親子関係の闇とは 

このままでは一生一人になってしまう

佳織さんがこの世界を選んだのは、今までやってみたいと思っていたこと、興味のあることを積極的にしてこなかったことへの反省があったからです。親御さんの影響もあり、自分自身で決断ができないことが多かったのです。その反省から、この時ばかりは自身の意思でこの世界に飛び込むことを決めたそうです。

佳織さんは一人っ子で兄弟がいません。また夜のお仕事をしていますが、信頼できる友達がいるわけではありません。仕事以外では一人でいたいと思うこともあるほどですが、ある時「このままでは独居老人になり、その先には孤独死が待っている」と思ってしまったそう。確かに、人付き合いが少ない佳織さんです。このまま年齢を重ね仕事を辞めれば、本当に一人になってしまいます。

そのような不安から、佳織さんは結婚相談所に入会されました。ところが「子どもはほしくない」「自分が2000万円を稼ぐので、年収はそれ以上の人」「自由を認めてくれる人」「別居婚でもいいと思う人」「性交渉を希望しない人」など、相手から見ると自分勝手に映るような希望を持っていました。

佳織さんは「仕事が終わって暗い部屋に帰るとほっとする、しばらく電気をつけずに暗闇の中でじっと座っていると落ち着くから。その時間が好き。誰にも邪魔されたくない」と感じていました。

そうなると、「結婚どころか人と一緒に暮らせないのでは?」と思うほどです。

一見矛盾しているようですが、佳織さんはきちんと挨拶もできますし、気遣いもできます。愛嬌もあって、とても愛想のいい人。ですから、子どものころから、人付き合いが苦手だったんですか?とこちらが驚いてしまうのですが、仕事とプライベートでは真逆です。仕事は仕事と割り切っているからこそ、2000万円もの収入があるのでしょう……。