自民党総裁選が円安につながるか

ドル安の裏で円も軟調だった背景に自民党の臨時総裁選実施の可能性が挙げられます。総裁選が円安に波及する経路の一つは自民党総裁選後に財政拡張策が報じられる結果、「悪い金利上昇」が起こり、円安につながるとの思惑が市場で燻っている点でしょう。

長期金利は、期待潜在成長率と期待インフレ率とプレミアムの合計ですが、このプレミアムの拡大による長期金利の上昇が「悪い金利上昇」です。この場合、当該通貨は金利上昇とは逆に値下がりする傾向にあります。

現在、クレジットデフォルトスワップ市場を見る限り、日本の財政悪化を織り込む動きはみられていません。しかし、日本のイールドカーブが1年前よりも上昇しているにもかかわらず、円高とはなっていないことから、少なくとも為替市場では現在の長期金利上昇をいわゆる「悪い金利上昇」と受け止めている可能性があります(スライド 10)。

 

 

臨時の総裁選が円安を招くもう一つの経路は日銀の金融緩和が長期化するとの見方につながることです。政府と日銀は2013年1月に共同声明を締結しており、その中で日銀はデフレ脱却に向けて金融緩和、政府は財政の信認確保にそれぞれ努めることが記されています。

そうした中にあって、政府が財政を拡張するときに、たとえ正常化であっても方向としては金融引き締めに該当する利上げを日銀が進めることができるのか、市場は疑問視しているのです。実際、昨年9月の自民党総裁選の第1回投票でトップに躍り出た高市早苗氏は当時、日銀の利上げについて非常に強い表現でけん制しています(スライド 11)。