今回は「ドル円160円の持つ意味」について解説します。
ドル円は、高市総裁が選出されてから上昇し、先週今年2月以来の高値となる157円90銭まで上昇しました。一方、アメリカの感謝祭を含む今週は総じて小動きでしたが、ややドルが軟調に推移しました(スライド2)。
今週の主要通貨の対ドル変化率を見るとドルが全面安となっています。また、円はドルに次いで冴えなかったと言えます。今週はドルと円がともに弱かったことから、クロス円は堅調に推移しました(スライド3)。
今週、ドル安が進んだ要因は大きく分けて3つです。はじめにFRB高官が相次いで12月の利下げを示唆したことです。特に、投票権のあるニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁、ウォラー理事の発言だけに市場も反応し、一時は3割程度まで低下していた12月利下げの織り込みが9割程度まで復活しました(スライド4)。
また、パウエル議長の後任として、5人の候補者の内、特にハト派として知られる国家経済会議のハセット委員長を有力とする報道が見られました。これもアメリカの金利低下とドル安に波及しました。その他、地区連銀経済報告、いわゆるベージュブックが各地域における労働市場の弱さを指摘した点も利下げ観測へとつながりました。
尚、現在は辛うじて民主党大統領によって指名された理事が過半数を占めますが、パウエル議長の交代により、これが逆転します。ただ、誰がFRB議長に決まっても、あくまでデータを重視して政策を判断するはずで、大統領に忖度して無理に利下げを続けることはないでしょう。理事の後のキャリアに響くからです(スライド5)。
ドル指数は利下げを再開した9月中旬以降、持ち直してきましたが、今週は米金利低下による金利差の縮小により、上昇が抑えられた格好です。もっとも、9月および10月の利下げ後もドル高が進んだ通り、織り込み済みの利下げによってこれ以上、ドル安が進むわけではないでしょう。特に、12月利下げの織り込みがかなり進んでいることから、次なる利下げがドル安を招く展開は見込みにくいでしょう(スライド6)。
加えて、ウォラー理事も来年以降については、会合ごとに利下げを判断すると発言しています。そこで、アメリカ経済の事前推計値であるダラス地区連銀のウィークリーエコノミックインデックスを見てみましょう。これは日次と週次の10種類の民間データを元に前年比で見たGDP成長率を推計したものです。
これによれば、11月26日時点でアメリカ経済は前年比で2.1%成長と潜在成長率を上回るペースを保っていることがわかります。従って、来年を見据えると、市場の注目は徐々に利下げ打ち止め後へと向けられそうです(スライド7)。
