<前編あらすじ>

終活相談に訪れた佐藤美佳さん(仮名、60代)が打ち明けた、20年前の秘密の告白。父・忠邦さん(仮名)の死後、偶然発見した自筆の遺言書には、兄・俊一さん(仮名)に財産の8割、美佳さんには2割を相続させるという内容が記されていた。

長年にわたり母の介護や家事を担ってきたにも関わらず、父からの評価は兄に偏っていたのだ。「気がついたら……手が震えてて。何か悔しさというより、『ああ、私って結局この程度だったんだ』って、そう思ったんです」と振り返る美佳さん。深い寂しさを覚え失望した彼女は、その夜、誰にも告げることなく遺言書を処分してしまう。

●前編:【「お兄ちゃんびいき」に絶望した妹…父の遺言書に記された “8対2”の相続格差を見て、衝動的にとってしまった驚きの行動】 

最終的に兄妹で法定相続

遺言書が見つからない以上、法定相続にのっとって手続きを進めるのが現代では一般的だろう。法律では、兄妹の法定相続分は2分の1ずつ。つまり、兄8割、妹2割という父の意思ではなく、完全に半々の分け方となった。

「兄は『まあ、それでいいよ』って。表情には少し戸惑いが見えましたが、何も言いませんでした。きっと兄は私がやったことを何となく察していたのでしょう。でも、証拠がない以上どうしようもなく、法律通りで手打ちにしたんだと思います。」

当時を語るときの彼女の表情は罪悪感とうしろめたさを感じつつもどこか安堵したような複雑なものだった。