「追納しても増えるのは半分」と言われる
しかし、職員から「ところで、本当に追納しますか?」と尋ねられます。どういうことなのか疑問に思った誠治さん。職員によると「老齢基礎年金の計算上、全額免除を受けた期間は保険料を納付していなくても納付した場合の2分の1が支給されることになります」と説明します。全額免除を受けた場合、誠治さんの老齢基礎年金は、たとえ追納していなくても、納付した場合の2分の1が含まれて支給されることになっています。これは2分の1の国庫負担(税金の負担)分からの支給があることが理由となっています。そして、「言い換えると追納しても残りの保険料負担分の2分の1しか増えないことになります」と付け加えられます。
20歳以上60歳未満の40年間で、480月納付済期間のある満額の老齢基礎年金は83万1700円(2025年度)となっていますが、誠治さんの65歳からの老齢基礎年金は現状の見込額は76万4124円です。誠治さんは①第2号被保険者期間52月、②第1号被保険者の納付期間383月、③全額免除期間は12月。そのうち、①②は納付扱いですが、③は全額免除なので、その月数の2分の1が計算に含まれることになります。
そのため、83万1700円×(52月+383月+12月×1/2)/480月で計算され、76万4124円になります。国民年金保険料は12カ月分で約20万円。もし、その12カ月分について追納すると、③は0月になり、②が12月増えて395カ月になりますので、83万1700円×(52月+395月)/480月となり、77万4521円です。通常、約1万7000円の保険料1カ月分納付すると1733円(83万1700円÷480月で計算)増え、12カ月・約20万円の納付で2万793円増える計算ですが、12カ月の全額免除分を追納という形で納付すると、77万4521円-76万4124円になるため1万397円の増額となります。つまり、20万円分の保険料の追納で増える老齢基礎年金は2万793円の半分ということになります。
そのため、職員より「むしろ、63歳から65歳までの2年間、国民年金に任意加入して保険料を納付したほうが多く増えますよ」と案内されます。2年間任意加入して納付した場合の誠治さんの納付と免除の合計月数は471月。65歳時点でその合計が480月以下の場合は、追納の場合と異なり、1カ月の任意加入・納付あたり老齢基礎年金は1733円増えることになり、2年間(24月)・約40万円を納付すると、83万1700円×24月/480月で4万1585円増えることになります。
年金についてのスケジュールの確認を
誠治さんは「そうなのか……じゃあ、65歳前に免除された時の保険料を納めてもあまり増えないんだな」と悟り、追納のことはしばらく保留し、まず、2年間の任意加入をすることにしました。免除期間分を追納するかどうかはまたじっくり考え、65歳前に結論を出すことにしたのでした。
追納の期限も含め、年金には期限が定められているものもたくさんあります。何年以内、何カ月以内という数字を覚えておくだけでなく、より細かい条件を見ていつまでに何をしなければいけないか、スケジュールはあらかじめ確認しておきましょう。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。