なかなか馴染めない
火曜日は「喫茶・こもれび」の定休日だ。
店を閉めるこの日だけは、朝も少しだけゆっくり。夫婦でブランチを取ったあとは、どちらかが買い出しに行くのが決まり。
今週は、真澄の番だった。
卵に牛乳、季節の果物、焼き菓子用のナッツ。買い物リストを片手にこぢんまりした直売所を歩きながら、地元の人たちの輪の外にいる自分を自覚する。
「こんにちは」
「あ、こんにちは」
すれ違いざまに挨拶をすると、顔なじみの主婦たちのにぎやかなおしゃべりがピタリと止んだ。悪意とは違う。ただ遠巻きにされているような、居心地の悪さを感じた。
真澄は手早く買い物を済ませ、腕にエコバッグをぶら下げながら、くたびれた気持ちで歩き出す。直売所の駐車場を出て、車道に背を向けると、そこに続くのは舗装されていない田んぼ道。しばらく人気のない畦道を進み、もう間もなく自宅が見えてくるかというタイミングで、畦畔ブロックの上、ひとりぽつんとしゃがみ込む女の子の姿が目に入った。年格好は小学校低学年くらいだろうか。
近づいてみようかと思ったが、知らない子どもに声をかけるのは躊躇われた。
結局そのまま家に帰り、聡志と遅めの昼食をとりながら、その話をすると、彼は記憶を辿るように言った。