残念ながらマーケットはひとつ
さて、これは昔から私が好んで使う表現なのですが、こういう時に私たちが思い出すべきは、「残念ながらマーケットはひとつ」というコンセプトです。
自らリスクを取って前向きな資産運用を行なおうとする私たちにとっての最大の敵は、様々な思惑(多くは短期的な判断で機敏に売買を繰り返す)を持つ「市場参加者」の存在と、世の中に溢れる彼らのロジックやコンセンサス(共通認識)ばかりを解説する情報の多さです。

NISAのおかげで日本人の投資家が増えたとは言われますが、米国など主要な株式市場には比較にならないほど多くの投資家がいて、莫大な資金を持っている場合も多いです。
その中にいるプロやセミプロのツワモノは、上の絵にあるように、市場で共有されるその時々のロジックやコンセンサスをベースにしつつ、少しでもその先を行って競争相手に勝つために戦っています。
そうした人たち専用と、私たちのような「日々の値動きを無視して長期での成長の側面を利用したい人たち」専用の株式市場が別々に存在するのなら良いのですが、当然そうではありません。「残念ながらマーケットはひとつ」です。
そして私たちの投資信託の基準価額は、中に入っている一つひとつの株式などのその日の最終価格を集めて算出しますから、短期勝負の人たちなどが「今日のロジック」で売買して決まった値段を反映せざるを得ません。株価などの「値段もひとつ」、だからです。
彼らのロジックは猫の目のようにコロコロと変わっていきます。1日に1回しか値段の付かない投資信託ではとても追いつくことはできませんし、追いつこうとする必要もありません。
私たちが常に思い出すべきは、残念ながらひとつのマーケットの中で「違う種類のゲームをする人たちが動かした結果を反映しているだけなのだから気にしない、気にしない」です。
でも耳に入ってくる投資関連の情報は、実はその違う種類のゲームをする人のためのものが多かったりもするのです。
昨日今日の値段を決めたマーケットの人たちのコンセンサスを解説するそうしたレポートや動画を観たとしても、「気にしない、気にしない」は却って難しくなるばかりです。