今年2月以降の株式市場の下落の際に、新NISAで始めた毎月の投信積立を「一時停止」にしてしまい、その後の再開について悩んでいるという声をネットで見つけました。
私のアドバイスを結論だけ言うと、
(1)停止だけで全売却してなくて、まだ良かったです。
(2)市場動向と関係なく、すぐに再開を検討しましょう。
となります。
あくまでアドバイスですから、ご自身で納得してからアクションを起こして欲しいのですが、その説明の前に、ここ数ヵ月のストレスフルで不愉快な市場の動きを振り返っておきましょう。
株は「右肩上がり回帰」を期待し、為替は仕方なく(?)受け入れる
まず先日のコラム(「米国株は厳しい?」と不安な人に知ってほしい…トランプ氏が「米国の株価が崩壊するようなことをし続けるか?」というロジック)で見たグラフを足元までアップデートしてみました。トランプ氏勝利の直前である2024年11月1日を100として、S&P500とオール・カントリー指数を5月23日まで示したグラフです。
●「トランプラリー」とその後の動き
期間:2024年11月1日~2025年5月23日
上図のS&P500とオール・カントリー指数(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)は米ドルベース(配当考慮せず)、下図はそれぞれを日興アセットマネジメントが円換算。
グラフ起点を100として指数化。信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
上は「米ドルベース」といって、要はアメリカ人が日々見ている動きそのもの。下はその日々の数値にその日の円/米ドルの為替を掛け算して求めた「円換算」の動きです。日本人の私たちがインデックスファンドを通じてS&P500やオール・カントリーに投資している場合は、こちらのような動きを見てきたことになります。
見て分かるように、高値から4月までの下がり方も、またそこから5月下旬にかけての上がり方も、「円換算」の方が不利だったことが分かります。
「米ドルベース」の直近では、S&P500もオール・カントリー指数も横軸のオレンジ線、つまりトランプ就任時の水準を上回っているのに、「円換算」ではまだ上回れていません。そう、もうお分かりの通り、為替の円高が足を引っ張ってきたのです。困ったものです。
さて、では今後の株式と為替はどうなるのでしょうか。
残念ながら明確な答えはお示しできません。しかし、当「20年後ラボ」のあちこちでお伝えしている通り、そもそも数ヵ月とか1年程度の予想は本当に困難で、結果としてアテにならないものです。
耳に入ってくる市場解説はもっともらしく聞こえますが、市場での売買が仕事の「市場参加者」による、その人たちの世界のための「ゲーム実況中継」みたいなものも多く、そうでない私たちが観ても読んでも、却って悩みを深くするだけのことも。
「将来のために資本市場を利用するが、決してそこで勝負やゲームをしたいわけではない」普通の“市場参加者”である私たちは、もっと大きな理解でいるべきです。株式については、以前のコラムでも書いたような「来年11月の中間選挙も意識されるようになるこれからにおいて、トランプ氏が米国の株価が崩壊するようなことをし続けるだろうか?」といった楽観論でもいいですし、当社がずっと言ってきた「短期の株価は予測不能だが長期の株価はシンプル。利益成長とリンクして右肩上がりとなるもの」といった骨太な信念みたいなものでもいいと思います。
一方で、為替については「長期で見れば右肩上がりになるはず」という期待をすべきではありません。ちなみにこの場合の「右肩上がり」とは、海外投資をしている日本人にとって有利な円安になり続けるということです。
しかし日本以外に投資したいなら、為替のリスクは避けて通れません。その動きが読めない以上、あくまでメインは株式の方であり、為替は仕方なく付き合うしかないオマケ要素と整理すべきです。「円高になるのを待って始め、円安になったらいったん売って……」などといった「オマケ要素」の方の相場観で投資信託を売買すべきでないことは、言うまでもありません。