停止していると「稲妻が輝く瞬間」に居合わせられないから
個人的な話で恐縮ですが、私はそれまでの証券会社勤務から2000年に投資信託業界に転職しました。その時に勉強しようと買い漁った本のひとつに『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス著/日本経済新聞出版社)というものがあります。
私が買ったのはちょうど前年1999年に出た初版本でした。その後幾度も版を重ねて今や世界100万部を超える名著となった本の初版本を持っていることが、私の(つまらない)自慢ですが、あちこちに引かれた蛍光ペンのひとつに、「(市場タイミングに賭けて売買する人は)“稲妻が輝く時”に市場に居合わせられないのだ」といった一節があります。
市場を見て出たり入ったりする人は、突然上がるその時に上昇の恩恵を受けられない可能性があることへの警鐘です。
まさにその通りで、トランプ関税を受けた暴落で怖くなって積立を停止してしまったり、全部を売却してしまったりした人は、4月からのこれまた急な“稲妻のような”反発劇に居合わせることはできなかったはずです。
そういえばコロナ・ショックの時もそうでした。まさにショック的な下落に皆があ然として何もアクションできないうちに、急角度で反発していきました。
株式は突然下がり、上がるのも往々にして突然です。その突然の上昇を逃すことが普通の人の資産形成にとって一番恐れるべきことだ、だから下げも上げも全部付き合うべく、何も考えず市場に居続けよ――それがチャールズ・エリス氏のメッセージでした。
とはいえすぐに急反発してくれるケースばかりではないのが悩ましいところ。ガンと下がった後にズルズル下がり、ずっとその状態が1年2年と、場合によってはもっと長く続くこともあります。
好調一辺倒だったと思われがちなS&P500ですが、下のグラフをよく見てみてください。ここ10年を見るだけでも、下落後に元の値を上回るまでにそれなりに時間がかかったケースが何度もあることが分かります。
期間:2015年1月2日~2025年5月23日
S&P500は米ドルベース(配当考慮せず)
信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
その度に積立を停止したり全売却したりして、何度もの“稲妻”を逃し、結局は自分が売った値段よりも高いところから再参入するような愚を演じた人はたくさんいたはずです。
積立投資をいったん停止してしまっていた人は、すぐに再開を検討しましょう。くれぐれも“稲妻”を逃さないよう、上げも下げも付き合う覚悟を改めて強めた上で。