老後の生活を支える有力な手段の一つである確定拠出年金(DC)には、個人が加入するiDeCo(イデコ)と企業の従業員が加入する企業型の2つの制度があります。9月16日は2016年に個人型DCの愛称が「iDeCo」に決まった記念日です。両制度の活用と資産運用の必要性を考えるきっかけとして、FinaseeではNPO法人確定拠出年金教育協会の協力のもと、「iDeCo・企業型DCショートエッセイ」コンクールを企画しました。全国の皆さまからご応募いただいた「iDeCo」「企業型DC」に関するご自身の気持ちをつづった力作から、栄えある優秀賞に輝いたニックネームみずのさんの体験談をお届けします。
ずっと避けていた「お金の話」、大切な人のためにできること
今年、40歳になった。夫も私も元気に働いている。ぜいたくはしないけれど、それなりに日々の生活はできていた。ただ、どこか頭の隅にずっと引っかかっていたのが、「このままで大丈夫なのだろうか」という将来への漠然とした不安だった。
生活費を除いた数百万円の貯金も、ただ銀行口座に眠ったままである。
時折、資産運用を勧める電話がかかってきてはいたが、「怖い」「失敗したらどうしよう」と不安ばかりが先に立ち、結局、何も行動できずにいた。
そんな私の背中を押したのは、昨年家族が相次いで入院したことだった。
実母と義理の父が思いがけず、病気を患ったのだ。元気が当たり前だと思っていた人が、ある日突然、病院のベッドにいる。
その現実を前に、「いつかのための備えは、今、しておかなくては手遅れになる」ことを痛感した。
そして、ずっと避けていた「お金の話」についに向き合うタイミングだと思い立った。
思い切ってファイナンシャルプランナーに家計の相談をしてみた。
そこで紹介されたのがiDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)だった。名前は聞いたことがあったものの、具体的な内容やメリットまでは知らなかった。丁寧な説明を受けるうちに「これは自分にもできそうだ」と思えるようになった。
iDeCoに加入してからというもの、数字の動きを見るのが少し楽しみになった。
もちろん、すぐに大きな変化があるわけではない。けれど、老後という薄ぼんやりとした未来に、具体的な光が差し込んできたように感じている。
お金に関して「よく分からないから」と目を背けていた過去の自分に、「もっと早く相談してみればよかったよ」と声をかけたいくらいだ。