<前編のあらすじ>

さくらは、大手コンサル会社に勤める男性と結婚をした。新居は瀟洒なタワマンの一室である。大学時代の友人たちを招待し自宅で開いたパーティも好評に終わった。

しかし、次第に雲行きが怪しくなる。友人から見せられたとある匿名のSNSアカウントが優雅なタワマン暮らしを投稿していたのだが、アップロードされている画像のことごとくが、さくらの自宅を撮影したものだったのである。いわゆる、なりすましだった。

思い当たる節は一つしかない。

さくらは、夫の発案で、再度友人たちを自宅に集めるのだが……。

前編:「自宅を公開しちゃいます」SNSに無断で晒されたタワマン新居…疑わしきは「気心知れた友達」

自宅は晒され続け

『SNSの件、みんなに相談もしたいし、よかったらまた家に集まろうよ』

さくらがそうメッセージを送ると、すぐにOKの返信が返ってきて、6人は再び集まることになった。もちろんその間も、小分けにしながら毎日のようにさくらの家は晒され続けている。

本当は友人を疑うことなんてしたくない。でも、このままではずっとモヤモヤした気持ちのままだ。

今回は一緒に参加してくれるという清志にも背中を押され、さくらは友人たちとの2度目のパーティーを開催した。

「皆さん、こんにちは。だいたいの方は結婚式ぶりですかね? 料理の用意もできているので、どうぞ楽しんで行ってください」

「わあ、ありがとうございます」

「お邪魔しまーす」

さすがにSNSでのなりすましの件があったこともあり、誰もこれみよがしに写真を撮るようなことはなかったが、料理が運ばれてくれば晴美はスマホを取り出して写真を撮っていた。

「やっぱり晴れてると綺麗だね。東京を一望って感じだ」

晴美は窓の外の青空に写真を向ける。いいなぁ、とシャッターを押しながらぼやいていたが、いくらうらやましいからと言ってやっていいこととやってはいけないことがある。

暗くなったさくらの表情に気づいたのか、となりに座っていた史織が耳元でそっささやいた。

「やっぱり、晴美……なのかな」

史織の目には、不安と疑いが混じっていた。

どちらかと言えば能天気でふわふわとしている晴美が、あんなことをするとは思えない。いや、思いたくない。だが疑心暗鬼に駆られているのはきっと自分だけではないのだ。

こうなったら腹をくくるしかないと思った。

さくらはスマホを取り出し、夫の提案通りの操作を行い、SNSの無断投稿をしていた「celeb_na_hitomi」をブロックしたのだ。

ただし、その際にさくらが選択したのは「その人が持っている別のアカウントもブロックする」という方法。夫に教えてもらったこのやり方でブロックすれば、それぞれ相互フォローになっているみんなのアカウントまで同時にブロックされるため、件の迷惑投稿をしている人物のアカウントが特定できるというわけだった。

さくらは「celeb_na_hitomi」をブロックしたあと、順繰りにみんなのアカウントを確認していく。

ブロックしたことで、アカウントが見られなくなったのは、晴美ではなく――史織だった。

みんなが楽しく話しているなか、さくらだけが動揺を隠せずにいた。

史織は何事もなかったように会話に加わっている。それどころか、晴美が怪しいかもと言ってきたり、大丈夫と真っ先に心配して電話をくれたのも史織だ。

さくらは困惑の渦のなかで、全身にかいた嫌な汗と悪寒に耐えるしかなかった。