次々起こる騒動

「う、うえぇぇん……!」 

「お、おい、嬢ちゃん……お前、母ちゃんは? 自分の名前、言えるか?」

「うわぁぁん……!!」

「あー……困ったなぁ」

強面の店主は、どうしていいかわからない様子だった。

「どうしたんですか?」

「迷子みてぇだ。親と離れちまったらしいんだが、俺じゃ余計に怖がらせるだけみたいでよ」

祐太は女の子を見た。まだ5歳くらいだろうか。涙でぐしゃぐしゃの顔で、周囲をきょろきょろと見回している。人を見た目で判断するなとはよく言うが、そりゃこんな厳つい人に声を掛けられれば怖いだろう。

「親を探そうにも、店開けたままじゃ動けねぇし……」

「それじゃ俺が探してきますよ」

気づけばそう言っていた。

「お? マジか、助かる。おーい、山さん! ちょっとこの坊主借りるぞ!」

店主が店のほうに向かって声をかけ、山城さんが許可を出したのを確認すると、祐太は女の子の手を取った。

「お母さん、一緒に探そうな」

女の子は泣きながらも、小さくうなずいた。祐太たちは、すでに辺りは日が落ちて暗くなった桜並木の下を歩きながら、人混みを縫うように探し回った。

「お母さん、どんな人?」

「えっと……ピンクの……コート……」

「ピンクのコートね、よし」

祐太は目を凝らしながら、ピンクの服を着た女性を探した。正直、この人混みのなかで見つけられるとは思えなかったが、そこはやはり母親の力とでも言うのだろうか。母親のほうが娘を見つけ出してくれた。

「ほのか!」

「ママ……!」

人混みのなかから聞こえた声に女の子の顔が明るくなった。女の子は祐太から手を放し、母親の胸に飛び込んだ。

「本当にありがとうございました……!」

母親は深々と頭を下げ、祐太も少し照れながら「いえ」と答えた。

頭上では桜が静かに揺れていた。