人々の意識のなかに根強く残るカースト

一方、憲法ではカーストや指定部族を元にした留保制度が規定されており、教育機関への入学のほか、公務員や国営企業職員への就職、議席の一定割合がいわゆる低カーストの人々に割り当てられる仕組みも作られています。近年はこうした対応を逆差別とみる向きもあるようですが、民間企業が率先して不可触民出身者による起業を支援するなどの取り組みも進んでいます。

さらに、近年インドにおいて活発化しているIT(情報技術)産業については職業選択の自由といった概念が最も広がっているとされています。しかしながら、インド人によって起業された著名なIT関連企業の多くは上位カーストの人々によって創業されているとされており、その意味では起業がカーストを超えられるというのは幻想に過ぎないという見方もあります。それだけインドにおけるカーストの問題は様々な面で根深いものがあります。

そして、インドにおけるカーストが関連する問題のひとつに結婚があるとされます。憲法によってカーストを元にした差別が禁止されているように、異なるカースト間での結婚は認められています。

しかし、ヒンドゥー教徒の結婚については、同じカースト、ないし近いカーストとの結婚が好ましいとされており、結果的に見合い結婚が多いとされます。少し前であれば新聞上に結婚情報を掲載する例がみられたほか、現在ではインターネットを通じたいわゆる婚活マッチングサービスの利用なども拡大しています。ところが、ネット上のサービスでは年齢や職業といった分類のほか、言語や宗教、カーストなどのフィルターを通じてプロフィールの検索ができる模様であり、依然として人々の意識のなかにカーストが根強く残る一例になっていると捉えられます。

●第2回は【インド】このまま人口は増えそうだが…一方で見逃せない経済成長に潜む“少子化の兆し”です。(3月25日に配信予定)

インドは中国を超えるのか

 


著者名 西濵 徹

発行元    ワニブックス

価格 990円(税込)