少子化が進む中、ますますの活躍が求められるミドル・シニア世代(40代~60代)。

しかし、意欲や態度といった個人の意識や企業の体制、社会構造などの問題により、ミドル・シニアの活躍は思うように進んでいません。

社会人材コミュニケーションズの宮島忠文氏と日本総合研究所の小島明子氏が、ミドル・シニアの活躍が進まない理由を解説します。(全4回中の3回)

※本稿は、宮島忠文・小島明子著『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日本経済新聞出版)の一部を抜粋・再編集したものです。

●第2回:解禁はしてみたが、活躍できるミドル・シニアはわずか… 40代以上の副業・兼業の実態とは?

変わらぬ〝若手〟信仰 それでも需要はある

社内で活躍が難しいと考えるミドル・シニア人材のなかには、社外へ機会を求める人もいますが、以前に比べてかなり改善しているものの、多くの企業は、ミドル・シニアの採用に積極的ではありません。本節では、企業側でミドル・シニア人材の採用が進まない要因について述べます。

厚生労働省1によれば、中途採用の方針は、「35歳未満」では約95%の企業が採用に積極的である一方、年齢層が高くなるにつれ採用の積極性は弱まり、「35歳以上45歳未満」では「よい人材であれば採用したい」が最多になる一方、45歳以上では「あまり採用は考えていない」が最多となっています。

1 厚生労働省「雇用政策研究会報告書」(2019年7月)

シニア人材を採ったことがなく、先入観からその採用が選択肢にもなく、若手ばかりを欲しいといっている企業には、制度も十分整備されていません。実際、シニア人材の採用実績がある企業では、中高年採用に積極的になっています。

商工中金2によれば、採用を希望している人材として、全体では「現場業務・生産」「営業」「販売・サービス」の順に高い割合となっています。業種ごとの特性も見られ、卸売業、印刷業では「営業」の割合が過半を占め、電気機器では「研究開発・商品開発・設計」の割合が高くなっています。情報通信業を除いて、「システム・IT・DX」分野への取組は限定的であることも分かっています。長期的な人員構成から若者への採用需要がある一方で、営業や商品開発担当者不足等が顕在化しているのです。

2 商工中金「中小企業の人材確保に関する調査」 (2024年) 

また報酬は、500万円から800万円くらいであれば、若手なら2人雇えることになります。しかし、若手の採用には、教育の必要性(=コスト・投資)が生じるため、戦力になるまでに時間とお金がかかります。