三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、11月12日「AI分野の戦略的コラボレーションに関する発表会」を開催した。

会では、三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTO 山本忠司氏、OpenAI Japan合同会社 代表執行役員社長 長﨑忠雄氏が登壇し、「国内最大のAI-Nativeな金融機関を目指す取り組み」について、説明した。

両社は、すでに2024年10月に三菱UFJ銀行全行員のChatGPT Enterprise利用に向けた実証、製品仕様のアップデートでコラボレーションを開始していたが、さらに"戦略的コラボレーション"を強力に推し進める。

左から三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTO 山本忠司氏、OpenAI Japan合同会社 代表執行役員社長 長﨑忠雄氏

その中心の1つが、2025年6月にリリースされたライフステージ総合金融サービス「エムット」のアップデートだ。エムットはリリース以降、三菱UFJカードの発券数が前年同月比の2倍、三菱UFJeスマート証券の仲介口座開設数が前年同月比14倍を記録するなど大きな反響を呼んでおり、「MUFGリテール戦略の中核」(山本氏)と位置付けられている。

発表されたのはエムットのアップデート第3弾の内容で、"戦略的コラボレーション"によって「金融×AIによる、先進性あふれるサービスを提供する」(山本氏)という。

検討されている具体的なサービスは以下の通り。

1.AIコンシェルジュ in MUFG Apps

MUFGが提供するグループ各社のアプリに最新のAIを搭載。質問への回答にとどまらず、利用するほどにパーソナライズされたサポートを行う「AIコンシェルジュ」を実装する。まずは来年度に開業予定のデジタルバンクへの実装を予定している。

2.申込専用AIチャット「エムットクイックスタート」

MUFGの特設ページに設けたAIレコメンデーションとAIチャットを通じて、エムット各種サービスの申し込みをサポートする。

3.Apps in ChatGPTとの連携

OpenAIが10月に発表した「Apps in ChatGPT」に連携。ChatGPTの仕組みにMUFG各社のアプリ等を接続し、ユーザーの状況に応じた家計管理や資産運用の相談をChatGPTとの対話の流れの中で自然に行える。

4.Agentic Commerceへの対応

ChatGPT上で商品の検索から購入まで完結できるコマース規格(Agentic Commerce Protocol)に対応する。ChatGPT上で販売業者が連携する決済手段に、MUFGの各種決済サービスの実装を目指す。

こうしたコラボレーションについて、長﨑氏は「われわれのミッションは汎用人工知能がすべての人々に利益をもたらす世界を実現すること。そこと(こうしたコラボレーションは)深くつながっている。そして今回の取組みは日本の金融を大きく前進させる節目になると考えている」と強調した。

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金利のある世界になり、いっそう"粘着性の高い"預金獲得に各金融機関がしのぎを削っている。エムットは、王道のポイントプログラムもさることながら、相続プラットフォームがあり世代間の資金移動を捕捉することにより長期目線の関係構築が特徴的だ。

飛躍的に進化するAIが、多くの世代にとって便利で革新的なサービスをどう創出していくのか。国内屈指のメガバンクグループとAIの世界的先駆者とのコラボレーションの今後が注目される。