ただし、シニア採用となると、「従来と同じ採用方法でよいか分からない」というのが企業(求人者)側の実態です。「職業紹介業における高齢者雇用推進ガイドライン(令和5年)」(高齢・障害・求職者雇用支援機構委託)5によれば、実際の高齢求職者のマッチングにおいては何らかの課題を感じている企業が多数派であることが明らかになっています。「求人者が、より若い求職者を要望する」の割合が66・0%と最も高く、次いで、「求人者が、高齢求職者の採用に不安を持っている」(44・5%)となっており、求人者側の理解を得ることが最大の課題となっています。
5 「職業紹介業における高齢者雇用推進ガイドライン(令和5年)」(高齢・障害・求職者雇用支援機構)
ヒアリング調査でもマッチングの工夫を聞いていますが、「求職者の要望に優先順位をつける」「高齢者が向かないと思われている仕事を避ける(夜勤等)」「人物像」「適性を再度確認し求人者にアピールする」「事前に会ってもらう」「求人者に一度仕事ぶりを見てもらう」「高齢求職者が学べる環境をつくる」などが挙げられています。
ミドル・シニア人材のマッチングの際には、丁寧に時間をかけて行うことを、マッチング事業者、企業、それぞれに求められるのが実情です。履歴書だけでも十分理解をしてもらえるような特出した専門性があれば別ですが、ミドル・シニア自身が、職業人生で培った豊富な経験やスキル、ノウハウが売りである以上、マッチング事業者、企業、それぞれが丁寧にヒアリングをしてみなければそのよさは分かりません。ただし、ミドル・シニア自身は人脈を豊富に有していることも多く、「リファラル採用」をうまく活用していくことも、今後はカギになるといえます。
採用に伴う負担やリスクへの躊躇
ミドル・シニアを中途採用したことがない企業にとっては、コストや手間の負担を考えて躊躇してしまうケースもあります。
ひとつは健康面です。体力はどうしても年齢とともに低下します。長時間労働に対応しづらく、急に病気になったり、家族の介護が発生したりする可能性も高まります。正社員として雇用した以上、辞めさせにくいということもありますので、そのようなリスクが高いミドル・シニアをあえて積極的に採用するメリットを感じられないのです。
厚生労働省は、2023年に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を公表し、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境の実現に向け、事業者や労働者に取組が求められる事項をまとめています。このなかには、高年齢労働者に配慮した職場環境の改善、高年齢労働者の健康や体力の状況の把握、高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応などが含まれています。しかし、企業側がそのような環境を整備するためには、それなりの負担も生じます。