少子化が進む中、ますますの活躍が求められるミドル・シニア世代(40代~60代)。

しかし、意欲や態度といった個人の意識や企業の体制、社会構造などの問題により、ミドル・シニアの活躍は思うように進んでいません。

社会人材コミュニケーションズの宮島忠文氏と日本総合研究所の小島明子氏が、ミドル・シニアの活躍が進まない理由を解説します。(全4回中の1回)

※本稿は、宮島忠文・小島明子著『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日本経済新聞出版)の一部を抜粋・再編集したものです。

長く働き続けられる環境は整いつつあるが……

平均寿命が延びるなか、日本社会としては長く就業を継続できる法律は整えられてきています。

2021年4月には、高年齢者雇用安定法が改正され、従業員に対する70歳までの雇用確保措置が努力義務となりました。

具体的には、①70歳までの定年引き上げ、②70歳までの継続雇用制度の導入、③定年廃止、④高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に、事業主自ら実施する社会貢献や、事業主が委託、出資(資金提供)等を行う団体の社会貢献事業に従事できる制度の導入――が求められています。

加えて、2025年4月には、「65歳までの雇用継続」に関する経過措置が終了し、企業は、「65歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」のいずれかを導入することが求められています。

では、企業の実態はどのような状況なのでしょうか。

厚生労働省1によれば、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施している企業は23万6815社、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施している企業は7万443社です。この時点で、約7割の企業が就業機会の提供を65歳までとしています。

1  厚生労働省「雇用政策研究会報告書」(2024年8月23日)

さらに、65歳までの高年齢者雇用確保措置の内訳を見ると、全体の約7割が継続雇用制度を導入しています。ただし継続雇用制度の場合、労働時間や勤務日数が減って非正規雇用になることもあり、活躍をしたくても活動が限定的になってしまうのです。

また、企業によっては、役職定年という形で、管理職等の役職者が一定年齢に達した場合、役職を外れて、専門職などに移行する人事制度を設けているところもあります。人事院の調査2によれば、大企業ほど役職定年制度が整備されており、従業員500人規模以上の企業の約30%は役職定年制を導入しています。

2 人事院「平成29年度民間企業の勤務条件制度等調査