世代を超えて高まるキャリア自律の重要性

キャリア自律について前節でも説明しましたが、最近では、人事施策を検討するうえで、年齢を問わずキャリア自律の重要性は高まっています。

堀内・岡田(2009)4は、キャリア自律の心理的側面と行動的側面の両方を包括した実証的研究を行い、キャリア自律の心理要因が「職業的自己概念の明確さ」「主体的キャリア形成意欲」「キャリアの自己責任自覚」「職業的自己効力感」の4つの因子から、キャリア自律行動が「主体的仕事行動」「キャリア開発行動」「職場環境変化への適応行動」の3つの因子から、それぞれ構成され、キャリア自律の心理要因がキャリア自律行動を促進すること、さらにキャリア自律がキャリア充実感を介して組織コミットメントを高めることを明らかにしています。

4 堀内泰利・岡田昌毅(2009) 「キャリア自律が組織コミットメントに与える影響」(「産業・組織心理学研究」23(1), 15-28.)

パーソル総合研究所5によれば、キャリア自律の度合いは20代をピークに40代にかけて低下し、その後横ばいの傾向にあることが明らかになっています。ミドル・シニア世代は、年齢的にも先々の不安を感じる年齢ですし、若いときは、働き方改革とは無縁な環境で働いてきたなかで、いきなりキャリア自律を高めなさいといわれても、理解に苦しむことは仕方がないことです。

5 パーソル総合研究所「従業員のキャリア自律に関する定量調査

同調査では、従業員のキャリア自律度と施策の関係性についても調査をしています。

企業として「多様性」「専門性」「成果」を尊重する風土がある場合は従業員のキャリア自律が高く、人事管理の面では、「個人目標と組織目標との関連性」「処遇の透明性」「社内の職務ポジションの透明性」「キャリア意思の表明機会」がある企業の場合、従業員のキャリア自律にプラスの影響が見られたことが示されています。教育支援面では、「キャリアカウンセリング」「自己啓発手当」「スキルアップ研修」などの教育研修、業務経験では「新規プロジェクトの企画・立案」や「部門横断プロジェクトへの参加経験」がキャリア自律にプラスの影響があることも示されています。