ミドル・シニア世代の疎外感

しかし、ミドル・シニア世代は、ジョブ型雇用ではなく、メンバーシップ型雇用で長く働いてきた世代です。人事評価の透明化は、スペシャリストではなく、ジェネラリストとしてのスキルを高めてきた、多くのミドル・シニアの方向性に迷いを生じさせます。キャリアカウンセリングやキャリア研修においても、人事部の限られた予算のなかでは、若者が優先されてしまうため、ミドル・シニア世代は後回しになるのが現状です。

先に述べた通り、社会人材コミュニケーションズの知命塾会員(ミドル・シニア)に対して実施をした調査のなかでも、約6割がミドル・シニア向けの会社の制度や施策について、満足をしていないと回答をしています。一方、ミドル・シニア向けの制度や施策に対する会社の目的やビジョンにおいては、十分理解できている人はわずかで約3割にとどまっていることも明らかになっており、ギャップが存在しています。応援をしているのに、退職勧奨と見えてしまうなど、会社のメッセージが、ミドル・シニアに歪んで捉えられることもあり、伝え方についても工夫が求められます。

昨今の従業員のキャリア自律を支援する動きはよいことですが、ミドル・シニア世代が取り残されないよう施策を検討する必要があるといえます。

第2回:副業・兼業の解禁はしてみたが、活躍できるミドル・シニアはわずか… 40代以上の副業・兼業の実態とは?

『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』

 

著者名 宮島忠文・小島明子
発行元  日本経済新聞出版
価格 2640円(税込)