数字で振り返る! 2014年制度開始時からの口座数と買付額

口座数と買付額の累計額から見てみましょう。ちなみに旧NISAだった2023年12月までの数字は一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3つを合計した数字で、そして新NISAがスタートした2024年以降は、成長投資枠とつみたて投資枠を合計した数字で計算されています。

制度がスタートした2014年1月時点では、まだ一般NISAのみの運用になっており、その時の口座数は492万4663口座で、その年の年末時点における買付額は、2兆9769億6913万円でした。それが、新NISAに切り替えるために旧NISAが終了する2023年12月時点においては、口座数の累計が2248万6363口座、買付額の累計が36兆5111億286万円まで増えました。

そして新NISAに移行してからは、データがそろっている2024年9月末時点において、成長投資枠とつみたて投資枠を合計した口座数が2508万6221口座、旧NISAからの買付額の累計は49兆471億803万円となっています。

この10年間で口座数は5倍、累計の買付額は16.5倍にもなりました。その点では、確かにNISAという制度ができたことで、多くの人の目が投資、資産運用に向いたのだと思います。

ただ、同時に口座数の推移を前年比で見ると、やや伸び悩み感が生じているのも事実です。

旧NISAがスタートした2014年1月から、新NISAの最新の数字が出ている2024年9月までの口座数の推移を見ると、旧NISAがスタートした2014年12月時点では、年初に比べて67.60%増となっていますが、これは制度スタートした初年ですから当然でしょう。2015年12月末の前年同月比も19.66%増で順調ですが、そこから一気にブレーキがかかり、2017年12月の前年同月比は4.09%まで低下しました。

また、2020年12月と2021年12月の前年同月比は、それぞれ12.12%増、17.13%増と大きく伸びていますが、この背景にあったのは、2019年6月に金融庁が公表した金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」をきっかけにして「老後2000万円問題」が話題になり、老後に不安感を覚えた人が増えたからだと考えられます。

さらに、2023年12月の前年同月比は、18.24%の伸びとなりました。旧NISAの最終年でなぜ口座数が急増したのか、不思議といえば不思議ですが、これは2023年中にNISA口座を開設して投資するメリットがあったからです。

それは何かというと、一般NISAの上限額である120万円をめいっぱい使って投資すれば、2027年までの運用期間中に生じる利益が全額非課税になることです。

翌年の2024年1月から新NISAがスタートしましたが、2023年中に開設した旧NISAは、その非課税期間である5年間に達するまでは非課税運用できるため、新NISAがスタートしてからNISA口座で運用するのに比べて、非課税枠を120万円分、最長5年間だけ増額できる効果が得られたのです。

そして2024年1月から新NISAがスタートし、現時点では同年9月までの数字が判明しています。口座数は2508万6221口座、買付額累計は49兆471億803万円です。この時点で1年の4分の3を終えただけなので、何とも言えませんが、残り3カ月を残して11.56%増は、2023年12月の前年同月比である18.24%増からすると、いささかペースが遅いと見られます。

もし、新NISAの移行によって、NISA制度に対する人気が一段と高まったとするならば、少なくとも9月が経過した時点で、前年同月比13.68%増を超えていなければなりません。この「13.68%」の根拠は、2023年中の口座数の増加率である18.24%の4分の3、ということです。

2024年9月時点で、本来なら13.68%増を超えていなければならないのに、実際は11.56%増にしかなっていないのは、やや口座開設のペースが落ちているという判断ができます。

買付額は2024年になって大きく伸びた

ただ、買付額の累計は大きく伸びました。過去の伸び率を見ると、2019年=15.81%増、2020年=17.89%増、2021年=20.25%増、2022年=18.48%増、2023年=18.47%増といった具合に、ほぼ10%台半ばから後半の伸び率だったのに、2024年9月末時点では、前年比で34.33%増を記録しています。

このように大きく伸びたのは、もちろん口座開設者が増えたこともありますが、やはり非課税投資額の上限が大きく引き上げられたからでしょう。

旧NISAの非課税投資額上限は、一般NISAが年間120万円、つみたてNISAが年間40万円で、そのいずれかを選択しなければなりませんでした。つまり併用が認められていなかったのです。

その点、新NISAの非課税投資額上限は、成長投資枠が年間240万円、つみたて投資枠が年間120万円までとなり、併用が可能です。この違いは非常に大きく、資金面に余裕さえあれば、これらの枠をめいっぱい使って投資する人もいるでしょう。結果、2024年9月時点において、すでに前年に比べて買付額が大きく伸びたのです。