ペロブスカイト太陽電池はなにがすごい?政府も支援、異例の半額を補助

冒頭のとおり、積水化学工業はペロブスカイト太陽電池の量産化を公表し、これを材料に同社の株式は市場で大きく買われました。ペロブスカイト太陽電池は、なぜ市場の注目を集めるのでしょうか。

ペロブスカイト太陽電池が注目される理由の1つは、材料の優位性です。

まず、ペロブスカイトとは結晶構造の名称です。そして、この構造を持つ化合物を発電層に用いるものをペロブスカイト太陽電池と呼びます。ペロブスカイト化合物(ABX3型)はヨウ素などから構成されます。

現在、太陽電池の発電層に用いられることの多いシリコンは、中国勢がシェアをほぼ独占しています。一方、ヨウ素は日本が産出量で世界2位、国際シェアの約3割を占めています(1位はチリ、シェアは約6割)※。国内で安定的な確保が見込まれることから、経済安全保障の面から期待されています。

※出所:経済産業省 資源エネルギー庁

2つ目の理由は、設置場所の拡大が期待できることです。

従来のシリコン系太陽電池は重く、設置できる場所が限られます。対してペロブスカイト太陽電池は薄く軽量で、折り曲げることも可能です。このため、耐荷重性の低い屋根や壁面など、これまで設置が困難だった場所にも導入が可能となります。積水化学工業が量産化を目指すペロブスカイト太陽電池も、このタイプです。

これらを背景に、国もペロブスカイト太陽電池を後押ししています。経済産業省による「GXサプライチェーン構築支援事業」に採択され、積水化学工業は量産化を推進します。支援事業の期間は2029年2月末までで、経費3145億円のうち半額が補助されます。この補助金は本来、大企業の補助率は原則3分の1ですが、積水化学工業はより手厚い支援を受けることとなりました。

積水化学工業は政府の補助金も活用し、まずは100メガワット級の供給体制を2027年までに構築します。また海外展開も視野に、2030年にはギガワット級まで引き上げることも目指します。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)