夜のとばりがおり一人で考えたこと
とはいえ、自分の人生がつまらないものだったとも思わない。見合い結婚で一緒になった夫は亭主関白で厳しく、気難しい性格の義母との関係にも苦労した。それでも、夫や娘たちと過ごした時間は確かに大切なものだった。結婚して自分の家庭を持ち、子どもを産み育てるという人生は、冬美に多くの喜びを与えてくれたのだ。
だが、それだけでよかったのだろうか。
今さら考えても仕方のない問いが、心に何度も浮かんでは消えていった。
夕方になると、日が傾くと部屋の中はさらに静かになった。
孫たちの声も、娘たちの笑顔も、ここにはない。ソファに深く沈み込みながら、窓
越しに夜の帳が下りるのをぼんやりと眺めた。
「また、何もしない一日が終わったわね」
呟いた自分の声がやけに空虚に響いた。
何もしないでいる時間は、まるで空っぽの箱の中に閉じ込められたような感覚だ。誰かが無遠慮に箱を開けて「早く出ておいでよ」と自分を掴み上げてくれればいいのに。そんな子供じみた妄想が、ふと胸の中に浮かぶと同時、玄関のチャイムが鳴った。