景気減速で利下げ加速のシナリオも

一方でインフレに対して、ぶり返すことなく米国雇用統計が非常に悪化した場合。つまり、非農業部門の雇用者数の伸びが5万人しか増えない、あるいは失業率が4%台半ばに向かって上がっていく状態になると今度は景気が心配です。

中央銀行としては利下げ2回どころではなく、3回4回と利下げをして経済を支えなければならなくなる。

こうなれば、当然為替市場はドル安になります。そして金利が下がることは景気に対しては追い風になりますから、株価が上がるという連想につながる。

ただ、景気減速に対する懸念が非常に深刻である場合はいくら金利が下がるといっても、株が上がるかというと、そうはならない。株式市場が調整するというシナリオも出てきます。

現状はトランプがどのような政策を出すのか。たとえば2月1日にから米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の相手国である2カ国に対して関税をかけるかどうか。中国に対する関税はどうか。選挙期間中には60%に上げると言っていたが少しトーンダウンしているがどうなるのか。

メキシコとカナダについては2月1日から関税を課す考えを改めて表明しました。この動画を撮影しているのは1月31日夜10時を回っているところですが、現代段階では100%確定ではありません※

※トランプ大統領は2月1日にメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税をかけ、中国には10%の追加関税を課す一連の大統領令に署名した。

またトランプ減税はどうなるのか。パウエル議長は「トランプ政権の政策を見守る」と言っていました。政策が具体的になるにつれ、金融政策はここまで紹介してきた「インフレが心配」シナリオ、「景気(雇用)が心配」シナリオ、どちらに進むかが決まってくるでしょう。

また、来週2月7日に発表される雇用統計で少し気を付けなければならない点があります。1月分が発表されるのですが、そのとき、2023年4月から2024年3月までの1年分の非農業部門の雇用者数の上限の年次改定値(NFP)が確定値として発表されます。

昨年8月にいったん仮の数字として2023年4月から2024年3月までのNFPについて、もともと発表されていた数値よりも81万8000人少なかったという推計値が発表されています。

ですから、2月7日に発表される確定値でさらに10万人も少ない、ということにはならないでしょうが、ネガティブサプライズが生じる可能性もあり、注意は必要です。