遺言書に記されていた内容とは
2つの遺言書のうち古い方の遺言書、すなわち2010年の日付の遺言書には「全財産を長男の太郎に相続させる」と記載されていた。そして新しい方の遺言書、2020年の日付の遺言書には「自宅を長女の美咲に、預金を次男の次郎に相続させる」と記されていた。
遺言書を確認した太郎さんは激しく動揺する。そして、「父は俺にすべて任せると言っていたのに、こんな遺言書はおかしい!」と声を荒らげる。
しかし、美咲さんと次郎さんは戸惑いながらではあるが「でも、これが父の意思なら守るべきだ」と、考えを強く主張する。
ここで兄弟間に決定的な亀裂が生じた。こうなってしまうとまともな話し合いは一気に困難となる。一応は話し合いが続くものの、話し合いは一向に進まない。
太郎さんは過去の酒の席での話も加味し、2010年の遺言書を優先すべきだと主張を続ける。美咲さんと次郎さんは新しいものこそが今現在の父の意見に近いとして2020年の遺言書が有効だと主張を続ける。
話し合いは毎週末のように行われたが話は全く進まない。そうしているうち数カ月の月日が過ぎた。
●田中家の争いの結末は、後編【「父は俺にすべてを任せると言っていた」父親の書斎で見つかった新旧2通の遺言書、最終的に優先されたのは…】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。