妹が隠していた驚きの現状とは
マンションのロビーでインターフォンのボタンを押すと、出てきたのは義弟でした。私の突然の来訪にさぞや驚いたことと思います。妹はそれ以上に驚いたはずで、案の定、「ロビーで待ってて」と言うといきなり通話を打ち切りました。急襲作戦成功です。
5分もしないうちに下りてきた妹は、「近くにホテルがあるから、そこのロビーで話さない?」とエントランスで人待ちをしていたタクシーに私を押し込みました。
久しぶりに会った妹は相変わらず髪型やネイルにお金をかけている様子でしたが、少しやつれた感じで、アルコールのにおいがしました。
眉をひそめて「昼間から飲んでいるの?」と尋ねると、「お姉ちゃんには関係ないでしょ」といらついた声が返ってきました。
連れていかれたのは、2~3年前にできたばかりの外資系ホテルのラウンジでした。注文したコーヒーが運ばれてくるまで、2人とも押し黙ったままでした。
先に沈黙を破ったのは妹の方でした。
「勝手なことして悪かったと思ってる。でも、ホントに大変だったの」
相変わらず一方的な物言いに腹が立ち、強い口調で問い詰めました。
「どうしてあんたが泥棒みたいな真似をする必要があるわけ?」
これ以上隠し事はできないと思ったのでしょう。妹は、義弟に内緒で7桁のカードローンを抱えていたことを打ち明けたのです。
「お姉ちゃんが言ってた“タンス預金”も70万円くらいあった。バッグは型が古くて二束三文だったけど、金がすごく値上がりしていて、指輪やネックレスが150万円くらいになった」
とはいえ、妹の中にも申し訳ないと思う気持ちはあったのでしょう。
「あのネックレス、お母さんが入学式や卒業式の時にいつもつけてたやつだよね」
「お祖母ちゃんからもらったものだからって大事にしてた。それを分かっていながら売り飛ばしたわけね?」
「それくらい大変だったんだよ。お姉ちゃんには分からないだろうけど」
妹の口調は、子供の頃、私に言い訳をした時と全く一緒でした。