本当にこの人大丈夫かなって思ったわよ

そんな時、仲のいいパート仲間が紹介してくれたのが、シングルマザーの支援をしているファイナンシャルプランナー(FP)の小原さんでした。

小原さんはご自分が幼子を抱えて離婚して大変苦労されたそうで、同じような経歴を持つ“士業”の女性たちと協力して、経済的に恵まれないシングルマザーや、夫のDV(ドメスティックバイオレンス)などに苦しむ女性に救いの手を差し延べ、経済的自立を促す支援を行っているとのことでした。

私のパート仲間の姪御さんもバイクの事故で旦那さんを亡くし、1歳の子供を抱えて困っていたところ、小原さんが遺族年金や児童手当などの助成金の手続きをしてくれた上に子供を預けて働ける体制まで整えてくれたと聞きました。

小原さんの存在はその時の私にとって、芥川龍之介の小説に出てくる「蜘蛛の糸」そのものでした。急に落ちた地獄の池から救い出してくれる1本の糸。どんな細い糸であっても縋りつくしかない。絶対に切らせてはいけない。

そんな必死の思いで小原さんの事務所の扉を開いたせいか、初めて小原さんと会った時、私は「生ける屍」のようだったと後から言われました。

「目に光がないだけじゃなく、全く生気が感じられなかった。本当にこの人大丈夫かなって思ったわよ」

それでも小原さんはそんな私から辛抱強く話を聞き出すと、優しく背中をなでて励ましてくれたのです。

「私はいろいろ大変な人を見てきたけれど、あなたは恵まれてる。自立した、頼りになるお子さんたちが側にいるんだから。今は3人の新しい生活のことだけを考えて!」

小原さんのポジティブな言葉を聞いているうちに、不思議と腹が座りました。

まず、自分が変わらないといけない。できることからやってみるしかない。そんな気持ちになったのです。

そして、小原さんとその仲間の方々による支援が始まりました。

●小原さんを通じて樋口さんの苦境を知った、税理士、弁護士、社労士からなる支援グループがついに樋口さんのサポートに乗り出します。夫からの裏切りの告白により、50歳にして意図せず人生のターニングポイントを迎えてしまった樋口さん。離婚から半年間の奮闘の続きは後編【慰謝料の支払いを同意させ、手取り25万円の仕事を見つけ出し、突如離婚を切り出された50歳女性を救った凄腕支援グループ】にて詳報します。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。