給料では買えないブランド品を身に着け

里佳が入社してから3カ月はほとんど行動をともにしていたので、ランチを一緒にとったり、仕事が一段落したタイミングでは飲みに誘ったりもしました。

私自身が様々な業務をそつなくこなす里佳に興味を持ち、出身大学や前職ではどんなことをしていたのかさりげなく尋ねたりしたのですが、その度にうまくかわされ、教えてもらえませんでした。

それどころか、親が何をしていてきょうだいがいるのかとか、付き合っている相手がいるのかも、全く分かりませんでした。ただ、里佳はいつも同じネックレスを身に着けていたので、彼氏にもらったものなのかなと思っていました。

というのも、それが高級ブランドのカルティエだということが特徴的なデザインから明らかだったからです。少なくとも、私の給料ではとても手が届きません。

そんな里佳が社内の誰かと不倫しているのではないかという不穏な噂を耳にしたのは、メンター期間を終え、里佳がイベントをプロデュースする部署に配属になって半年ほど経った時でした。

そして、私自身も実際に目撃してしまったのです。

その日は金曜日で大きな案件が片付いた直後でもあり、久しぶりに大学時代の友人たちと千葉市内まで繰り出しました。その帰り道、ホテル街の近くを通ったら、なんとイベント企画部の部長と里佳が手をつないで歩いているではないですか!

里佳は、いつもの清楚な雰囲気とは全く違う、こびるような蠱惑(こわく)的な笑顔を部長に向けていました。

「あぁ、そういうこと」

心地良い酔いが、すっと冷めていくのを感じました。

●従業員数50人規模の職場では、うわさが回るのも早く、次第に明らかになっていく不倫だけでは収まらない里佳さんの所業の数々。騒動は一時期日本中で話題になった「頂き女子」の事件を彷彿とさせるような、衝撃の結末を迎えます。後編【「母が心臓病で治療にお金がかかる」と貢がせて…28歳女性が見た仕事のできる後輩の“頂き女子”顔負けな素顔】で詳説します。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。