契約書がなければ契約は成立しない。そう思っていないだろうか? 実はSNSでのやりとりから契約の成立が認められるケースもある。そこで、友人間の金銭トラブルにおいてSNSでのメッセージ機能から契約の存在が認められた廣田さんの事例を紹介しよう。

廣田さんに届いた友人からのメッセージ

廣田さん(仮名)は今年で28歳になる男性だ。新卒から有名企業に勤め、順調に出世街道を歩むエリート会社員だ。そのせいか同世代に比べると懐にはかなりの余裕がある。

だがしかし、学生時代の友人と会う時はたいていお金の話をされることには若干うんざりしていた。最近では友人らと会う際はいつも自分からお金を多めに出していた。

そんな中、学生時代の友人の1人である近藤さん(仮名)からSNSでのメッセージ機能を用いて相談を受けた。近藤さんは学生時代に仲が良かったものの、今では関東圏にある地元に帰ってしまっている。年に数回の長期休暇で会う程度で、それ以外はもっぱらSNSのメッセージ機能を用いてやりとりしており、時折仕事についての相談を受けている。

「すまない、恥を忍んで頼みがあるんだ」。近藤さんがメッセージを送ってくる。普段ならある程度話を聞くだけにとどめていたが、今回は深刻さを感じて詳しい話を聞くことにした。

「どうした? 話してみろよ」。廣田さんが返信をする。

「本当に申し訳ない、300万円貸してくれないか? 1年後の8月に絶対全額一括で返すから」。聞けば事業を新たに立ち上げたいのだがどうしても300万円が足りず……やむを得ず比較的余裕のある廣田さんを頼ったようだ。

廣田さんも事業内容を聞いて勝算は十分にあると判断した。長いこと親交のある近藤さんが相手ということもあって、打診された300万円には少し足りないものの250万円を用意。翌週、仕事で都内を訪れた近藤さんへ手渡した。

金額が大きいことから話し合いのもと契約書を作ろうという話題も出たが、最終的には契約書は作らなかった。