今度こそは
婚活の継続に消極的になっていた梨沙子だったが、もはや習慣になっていたマッチングアプリのブラウジングは続けていた。
諦めよう。そもそも結婚に向いていないのかもしれない。
そう思った矢先、梨沙子の気持ちを引き留めようとするように、新たな男性とマッチングした。彼の名前は、天野新一。現在43歳で未婚、大手銀行の管理職だという。趣味として記載されていたのは美術館巡り。そのプロフィルに梨沙子は少し興味を引かれた。美術作品には以前から関心があったし、何より銀行員という肩書から、金銭感覚のしっかりした人なのではないかという期待を抱いたのだ。
新一とのメッセージのやり取りはスムーズで、共通の話題も多かった。彼の言葉遣いは丁寧で、気遣いにあふれ、どことなく上品さを感じさせた。これまでの男性たちとは少し違うかもしれない。
梨沙子は、そんな淡い希望が自分の中で膨らんでいくのを感じずにはいられなかった。赤いペンを探し、卓上のカレンダーを手に取る。柄にもなく、会うと約束した日に赤くきれいな丸を書いた。
●梨沙子は今度こそ理想のパートナーに巡りあうことができるのだろうか。デートの当日、「意外な真実」が明らかになる……。 後編【「彼の一言で一気に冷めた」うまく行っていたはずの婚活が一転…美術館デートで露呈した「残念すぎる価値観」】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。