<前編のあらすじ>
現在43歳の中森さん(仮名)にとって、大嶋さん(仮名)は頭の上がらない恩人。学生時代、堕落した生活で単位を落としがちだった中森さんの面倒を見て、卒業まで導いてくれた。加えて就職先の世話までしてくれて、中森さんは20年以上たった現在もそこで仕事を続けている。
ある時、大嶋さんから子の入学費用として100万円を貸してくれないかという打診があった。車の事故によるリハビリで仕事を休んでいるため、子の進学費用が用意できないという。妻の仕事を増やして半年以内に返す見込みがあると話すので、学生時代の恩もあった中森さんは半年以内の返済条件として100万円を貸すことに決めた。
●前編:【子の進学費用が用意できない…休職で苦境に立たされた恩人に、40代男性が考えた“恩返し”の方法】
作成した契約書
筆者の事務所へ大嶋さんが相談に来たのはそのタイミングだ。先輩に100万円のお金を貸すことになった経緯とともに、額が額であるために契約書を作ってほしいという契約書作成の依頼だった。
私からは相談を一通り聞いたうえで、「通常の契約書ではなく公正証書にしましょう」と提案した。
理由は法的な観点からの拘束力の強さの違いだ。結局のところ契約書を作ったとしても、差し押さえまでしてお金を回収するのには裁判手続きが必要だ。時間もお金もかかり、100万円程度のお金のためにそこまでするべきかどうかは微妙なところだ。
仮に差し押さえが成功したとしても、相手にお金がなければ回収は結局できず泣き寝入りだ。時間とお金だけ消費して徒労に終わる。
その点公正証書の形で契約書を作成できれば手続きを省略して即差し押さえができる。時間も費用もかからずお金が回収できることになる。
しかし、中森さんからの回答は意外なものだった。