あえて通常の契約書を選んだ中森さん

「僕は通常の契約書を選びます」。中森さんは私の提案を一蹴してそう言い切った。

「通常の契約書であっても証拠にはなりますよね? それに公正証書は作成のハードルが高いので……」と、言いづらそうに述べた。

確かにそうだ。通常の契約書であっても契約の成立の証しの証拠としては使用できる。加えて公正証書は公証役場という場所にて作成するため時間も手間もかかる。そして公証人に依頼する形になるためその分の費用もかかる。さらには相手方とそろって公証役場に行くことが原則であるなどハードルは意外と高い。

もろもろの理由から諸事情を鑑み、中森さんは効力の差も承知のうえで通常の契約書を選んだようだ。

私は中森さんを説得した。100万円という金額に比べればもろもろの手間などは惜しむべきではないことなどを熱弁した。

しかし中森さんの意志は固く、結局私は通常の契約書を作成した。

返済を拒否する大嶋さんに怒りが爆発

案の定というべきか、半年経過しても大嶋さんはお金を返さなかった。理由は「まだまだお金が厳しいから」というものだ。

中森さんはある程度こうした事態も想定していたようだが、さすがに1円も返ってこなかったことや返す気すらない態度に絶句。私へ内容証明郵便の作成を依頼し、大嶋さんへ送付した。

それでも大嶋さんは1円たりとも返済をしなかった。

この態度に怒りが爆発した中森さんは最後の手段に出た。中森さんが通常の契約書でもいいといった本当の理由…それは「親族に契約書を見せて協力をお願いする」というものだった。