確定給付企業年金(DB)を最大限活用したケース

もう1人は、「しっかりと活用したい」という印象的な方がおられました。外資系の会社で働いてこられ、退職一時金が1000万円、確定給付企業年金(DB)が2000万円という状況でした。

結論として、この方は確定給付企業年金(DB)の約7割を年金として受け取られる選択をされました。年金として分割で受け取ると、公的年金と併せて「雑所得」となり、毎年の課税対象となるため、所得税や住民税が増える可能性があります。

この方の場合も、確定給付企業年金(DB)を年金(分割)で受け取った方が、総額は若干多くなるシミュレーション結果でした。

当初は全て一時金として受け取る予定だったのですが、相談を重ねていくうちに考え方に変化が出てこられました。

きっかけはもちろんキャッシュフロー表の結果です。2000万円を20年間で受け取るプランを選んだ場合、毎月約10.4万円、総額で約2496万円を受け取ることができる試算でした。年金として受け取ることで企業年金で運用され、相談者さんのDBの場合は利率2.3%の恩恵を受けることができるそうです。

これまで運用らしい運用をされたことはなかったので、全額を一時金で受け取っても預金にしておくのはもったいないと考えており、年金として受け取ることで「運用しているようなもの」と判断されました。

確定給付企業年金(DB)は、年金資産の運用や企業の業績が著しく悪化した場合には給付減額の可能性もありますので、この金額が必ず受け取れるとは限らないことを説明し、最終的にこの方は、2000万円のうち25%にあたる500万円を一時金として、残り1500万円を年金として受け取る選択をされました。月額は約10.4万円から約7.8万円に減少しましたが、20年間受け取れる予定で、かなり安心していらっしゃいました。

今回は確定給付企業年金(DB)の受け取り方についてご紹介しました。退職金の受け取りについては、いかに資産を「増やす」「残す」という考えも1つかと思います。しかし、退職後は第2の人生の始まりともいわれます。せっかくですから、老後を気持ちよく過ごす、という視点も大事に、自分らしい受け取り方を考えていただければと願っています。