「報酬比例部分の4分の3」で計算するとは限らない
そうなると、佳子さんが考えているとおり、120万円から130万円を差し引くと遺族厚生年金は0円になると思われるかもしれません。
しかし、その65歳以降の配偶者に支給される遺族厚生年金について、差し引かれる前の遺族厚生年金は、「死亡した人の報酬比例部分の4分の3」(A)か「Aの額に3分の2を掛けた額+自分の老齢厚生年金の2分の1」(B)、いずれか高い額を用いて算出します。そして、AとBのうちの高い額から遺族自身の老齢厚生年金を差し引いた額が実際の差額支給分として支給されます。
佳子さんが認識していたのはAの計算方法。単純にAで計算すると、160万円×3/4で120万円、ここから佳子さんの老齢厚生年金130万円を差し引くとマイナスになってしまいますので、遺族厚生年金は支給されないことになってしまいます。
しかし、Bの計算方法だと差し引く前の遺族厚生年金は、160万円×3/4×2/3+130万円×1/2で145万円となります。145万円から佳子さんの老齢厚生年金130万円を差し引くと15万円となります。
つまり、Bの計算方法を用いた結果、佳子さんには遺族厚生年金として15万円は支給されることになります。一文さんの死後は、佳子さん自身の老齢基礎年金80万円、老齢厚生年金130万円、差額支給の遺族厚生年金15万円を合計して225万円で支給されることになります。
夫の厚生年金が多かったことも要因
全く支給されないと思った遺族年金がわずかに支給されることになりました。佳子さんはもちろんのこと、一文さんも会社員として長く厚生年金に加入していたため、一文さんの老齢厚生年金も多く、結果、差額支給の遺族厚生年金も支給されることになりました。
もし、一文さんが厚生年金に加入している期間が短く、老齢厚生年金が少ないと、先述のBの額は145万円より少なく、差額支給の遺族厚生年金は支給されなかったかもしれません。佳子さんは「1人で生活する分には225万円なら何とかなりそう」「ずっと好きな看護師の仕事が続けられただけでなく、今回遺族年金が受け取れるのも夫のおかげね」と亡き夫に感謝するのでした。
遺族年金が支給されるかどうかは、実際に計算してみなければわかりません。対象になるか気になる場合は、支給のルールや計算方法、実際に支給される場合のその支給額を確認してみましょう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。