残される者の気持ち
「……お義母(かあ)さん、いきなりどうしたんだろうね?」
その日の夜、夕食を食べながら昼間あったことを話すと、利喜は腕を組んで考え込んだ。
「そもそも、散骨ってよく聞くけど、法律上やっていいものなのかな?」
「勝手に私有地の浜辺にまいたりするのはダメだけど、手続きを踏めば問題はないみたい。一応、調べてみたけど、特に法律で何か罰則とかそんなのがあるわけじゃなかった。海への散骨をやってくれる会社もあるみたいだし」
「そうか、じゃあ、問題ないのか……」
「法的に問題なくても、こっちとしてはあり得ないって。散骨なんて絶対に嫌よ。海に骨をまいちゃったら、どこにお参りをしていいのか分からないじゃない。それにお骨を全部まいちゃったら、本当にお母さんがいなくなるみたいで……」
有紀は自分を育ててくれたたった1人の肉親として礼子のことを大切に思うだけに、散骨に対しては反対だった。
「そうだよね。確かに、有紀の言うとおりだ。俺も両親からそんなことを言われたら、複雑な気持ちになると思う」
利喜は優しい口調で賛同してくれた。
「うん。でも、どうしたらいいんだろう。お母さん、ああ見えてけっこう強情だから」
「とにかくまだ時間もあるし、説得し続けてみようよ。お義母(かあ)さんだって、ちゃんと話せば有紀の気持ち分かってくれるって」
勇気は利喜の優しさに感謝する。利喜はいつでも、有紀の気持ちを最優先にしてくれる。実家近くのマンションに住めているのも、礼子が心配だという有紀の気持ちをくんでくれたおかげだった。
自分には利喜という味方がそばにいてくれる。そう思うだけで、本当に心強く感じた。