払った亡き夫の国民年金保険料は還付されない
那月さんは「ダメ元で慌てて払いに行っても仕方なかったんですね」と職員に言います。続けて「じゃあ、遺族年金も受けられないんだったら払った保険料は返してもらえますよね?」と職員に尋ねます。
しかし、職員は確認した上で、「払った翔太さんの保険料は還付されません」との回答をしました。どうやら遺族年金の支給の有無に関係なく、那月さんが慌てて払った保険料は戻ってこないことになりそうです。
「ちゃんとよく調べもせず夫の保険料を払ったから払い損になっちゃった……」と言い、遺族年金が支給されないこともあって意気消沈してしまいました。
万が一に備えて翔太さんが国民年金保険料を払っていれば…
翔太さんが日頃から国民年金保険料を払っていれば、息子の壮真さんが高校を卒業するまでの間、遺族基礎年金として年間100万円以上が支給されていたのに、それが支給されない結果になりました。
翔太さんの遺産はありましたが、遺族年金もないまま、那月さんのパート収入だけでは毎月の収支は赤字になります。今後の壮真さんの教育費などを考えると、那月さんは将来について不安を感じました。
結局、那月さんと壮真さんは、那月さんの両親と同居するようになり、両親に生活面で助けてもらうことになりました。「今後私がフルタイムで働いて稼ぐようになるためには壮真の面倒を両親にも見てもらうしかない。両親に頼るまいと思っていたけど、どうしようもないし仕方ないかな……」と申し訳ない気持ちになりながら新たな生活を始めました。
年金は老齢年金だけでなく、遺族年金もあります。遺族年金制度については改正や見直しの議論の対象となってはいますが、いざという時の保障になりますので、その点も踏まえて備えておくことが大切です。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。