<前編のあらすじ>

翔太さん・40歳は個人事業主で、パート勤めの妻の那月さん・38歳、息子の壮真さん・9歳と暮らしていました。数年間だけ会社員をしてから個人事業主となった翔太さんは、毎年のように年収は2000万円以上、所得も1000万円以上ありました。「これだけ稼げれば今も将来も安泰だろう」と考え、年金制度は信用できないという理由から、国民年金保険料を払っていませんでした。

ところが、翔太さんは心筋梗塞で亡くなってしまいます。那月さんはあまりに急な出来事で状況が飲み込めないながらも、何とか亡き夫の葬儀を済ませました。しかし、パート収入のみで息子もまだ幼いため、今後の生活に不安を感じ始めました。

その時ふと、遺族年金制度の存在を思い出します。「死亡した人の保険料を納付すれば遺族年金が支給される」という情報を聞きつけ、「今から払えば何とかなるかも」と、亡くなった翔太さんの国民年金保険料の納付書を見つけ、慌ててコンビニエンスストアで納付。その後年金事務所へ相談に行きました。

ところが職員からは、「保険料の未納が多いため、遺族年金は支給されません」と驚きの事実を突きつけられます。

●前編:【「年金?そんなん当てになるか。信用できない」年金保険料を払わない40代男性に訪れた残念すぎる結末】

亡くなった日以降に慌てて払いに行ってもダメだった

遺族年金が支給されるには、亡くなった人が保険料納付要件を満たす必要があります。日頃から保険料を納めていれば、あるいは収入が少なくて保険料を納められない場合にその免除申請もしていれば満たせますが、そうでない場合は納付要件を満たせず、支給されません。

その具体的な保険料納付要件については、死亡日の前日において、死亡日の前々月までの国民年金の被保険者期間のうち保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること(原則要件)、あるいは死亡日の前々月までの直近1年間に未納期間がないこと(特例要件)、いずれかを満たすことを指します(※)。原則要件も特例要件も「死亡日の前日時点」での納付状況で判定される点が大きなポイントです。
※特例要件は死亡日時点で65歳未満であること、2026年3月までの死亡の場合が対象

翔太さんは収入が多く、保険料免除の対象とはならなかったため、毎月ちゃんと保険料を納める必要がありました。しかし、翔太さんは生前ずっと保険料を納めていませんでした。

死亡日前日時点での翔太さんの納付状況を見ると未納が3分の1を超えて原則要件を満たさず、直近1年も未納だったため、特例要件も満たしていません。そして、その未納保険料を遺族が死亡当日あるいはそれ以降に払っても意味がありません。原則と特例、いずれの保険料納付要件を満たせないことになり、遺族年金は支給されないことになりました。