入社時とは完全に逆転してしまった立場

確かにこの5年間は推し活命で、仕事で大した実績は上げていません。むしろ、就業中も暇さえあれば推しの動画をチェックし、観戦ツアーで有休を取りまくるなど、上司や同僚に決していい印象は与えていないでしょう。

そんなダメダメ社員の私が、マネージャーの華菜に鉄槌(てっつい)を下される。想像しただけでもぞっとします。

5年前の入社時には、むしろ私の方が期待の星でした。

学生時代に結構大きなサークルのマネージャーを務めていた関係で、エクセル使いには自信がありました。ITリテラシー低めのおじさんが多いマーケティング部ではそれが重宝され、データ分析などの仕事を全面的に任されていたのです。

しかし、私はそうしたスキルの上にあぐらをかき、例えばデータの分析に新しい視点を加えるといった努力は一切せず、言われたことだけをさっさと片付けてそれでよしとしてきました。だって、推し活の方が断然楽しいのだから仕方ありません。

だからといって、「こんな会社辞めてやる!」と開き直ることもできません。ネーションズリーグの遠征費などの引き落としで夏のボーナスも一瞬にして消え、口座残高は10万円を切っています。

転職したくても積み上げたキャリアが何もないのですから、いくら売り手市場とはいえ、待遇面で足元を見られるのは必至です。今の給料でさえ足りないくらいなのに、これ以上収入が減ってしまったら推し活に支障をきたします。

そんなこんなで何とも中途半端な気持ちのまま、華菜マネージャーが就任する日を迎えてしまったのです。

●その後2人は食事に行くことになり、中里さんから意外な話を打ち明けられました。後編【「本当に感謝してる」“推し活命”の女性がキラキラ上司になった同期に打ち明けられた「意外な話」】で詳説します

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。