「家族間でも契約書は作った方がいい」。法学部出身であるなどして法律を学び、かつ、金銭の貸し借りについて現実的に考えている人ほどこう考えるだろう。だが、そこからさらに一歩進んで考え、契約書を公正証書にしておくべきだと考えている人はそう多くない。

実際に読者諸兄の中にも、公正証書にまでする必要があるのか? と疑問に思う方も多いだろう。しかし、その考えに一石を筆者は投じたい。そこで、家族間のお金の貸し借りについて宮内姉妹の話をしよう。

性格が正反対の姉妹、芳香さんと紗矢さん

今回の主人公は宮内姉妹のうちの姉・芳香さんだ。

芳香さんは学生時代からまじめで文武両道。大学を卒業後は大手企業で働き、残業も休日出勤もいとわない仕事人間だった。まじめな性格も健在で、実家にある程度のお金を入れつつも毎月何万円も貯金をしていた。年2回のボーナスも家族サービスに使いながら、その大部分を貯金に回しているほどだった。

それに対して妹の紗矢さんは自由奔放。学生時代は学校を休みがちで学業も不振。高校をなんとか卒業するものの定職に就くことができずフリーターの道へ。

とはいえ本人もフリーターは不本意であったようで情報商材やネットワークビジネスなどさまざまなことに手を出すがことごとく失敗。気づけば消費者金融に始まり親せきに至るまで方々からお金を借り、借金の総額は200万円に到達していた。

「私だって好きでこうなってるわけじゃない!」

「なんで私が悪者なの?」

彼女の口癖はどうも他責志向なものが多かった。

しかし、そんな紗矢さんも20代後半に至り人生について真剣に考えだした。ある日「人生はいつでもやり直せる」と父親から説得を受けて一大決心。「将来を明るくしたいから」と家族の前で真剣に話をし、大学進学への希望を打ち明けた。