長居さんが本妻との対面を決めた理由とは

葬儀には呼ばれず、どこに埋葬されたのかも知らされず、悶々(もんもん)とした毎日を送っていたところ、彼の死から2カ月ほどして、遺族の代理人だという弁護士事務所から連絡がありました。

あなたたち母子に渡す財産はない、それどころか、彼が私や息子のために貯めたお金があったら返すようにという、血も涙もない通告でした。

彼から奥さんの酷薄さを聞かされていた私は、奥さんの言いなりになるつもりは毛頭ありませんでした。そこで、大胆にも奥さんに面会を求めたのです。

初めて会った彼の奥さんは、私が想像していた人物像とは全く違うタイプの人でした。小柄でほっそりしていて一見繊細そうですが、切れ長の目には強い光を宿していました。

奥さんは開口一番こう言いました。

「主人の遺産は3億円ありました。でも、あなたには1円たりとも渡しません。あなたには受け取る権利がないですから」

そして、問わず語りに自分の話を始めたのです。

5歳上の彼とは旅先で出会って結婚し、間もなく娘さんに恵まれたこと。けれど、その後の彼は言葉の暴力がひどく、女性関係も手当たり次第だったので、早くから離婚を考えていたこと……。

思わず、息をのみました。奥さんの話は、私自身の話でもあったからです。私は、元夫のDVや浮気に耐え切れず、息子を連れて逃げるように離婚したのです。

「15年前、もう我慢できないと娘を連れて身一つで家を出ようとしたことがありました。世間知らずの主婦だったから、役所の法律相談に行きました。それが転機になりました。対応してくれたのは同年配の女性弁護士で、『冷静になりなさい。感情の赴くままに別れたら、あなただけでなく娘さんも不幸になる』と言われたんです」

彼が大手企業に勤務するエリートで裕福な家庭の息子と聞いた女性弁護士は、こう助言したそうです。

「年齢差と男女の寿命差を考えれば、あなたの方が長生きする可能性が大よ。今離婚すると、もらえるのは娘さんの養育費くらい。10年間で、せいぜい500万円かしら。でも、仮に彼が男性の平均寿命の79歳まで生きて亡くなるとしたら、その時点であなたは億単位の遺産が手に入るのよ」